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ユニコーン創出を狙う、産総研と物材機構が始めるデータ連携の中身

産業技術総合研究所物質・材料研究機構(物材機構)は4月からマテリアル(材料)分野のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)創出を狙いに、データ連携を始める。企業ごとに研究データセットや解析ツールを組み合わせたパッケージを作り、新技術の開発、事業化を支援する。経済産業省と文部科学省が組む省庁横断的なスタートアップ支援策になる。

内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)として実施する。SIPでは全国の大学や国立研究開発法人が保有する研究データベースや研究設備をネットワーク化する。この中核機関に産総研と物材機構を指定する予定。マテリアル分野の研究をけん引してきた2機関が組み、ユニコーン育成チームを立ち上げる。

まずは専任者としてコーディネーターを配置し、スタートアップに必要なデータセットや解析ツールを設計し、各機関からリソースを集める。この活動を通して事業化支援や開発加速に必要な支援パッケージのひな型を作る。このひな型にそって大学などがデータを蓄積すると、研究と事業が結びつきやすくなり、国として社会実装の効率が上がる。

支援パッケージは新素材のプロセス設計ツールなどを想定する。論文には実験で得られた最高のデータだけ載せることが多い。だが新素材を量産化するには性能の制御範囲が重要になる。実験データと製造プロセスのシミュレーションを組み合わせるとプロセス設計ツールを構築できる。

こうした各企業への事業化支援ツールは知財としてスタートアップに提供され、新規株式公開などの際に研究機関へ利益が還元される仕組みになる。

日刊工業新聞 2023年02月10日

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