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メタバースで合同企業説明会、博士人材こそフィットする理由

メタバースで合同企業説明会、博士人材こそフィットする理由

別室で個別プレゼンテーションをする事例(tayo提供)

tayo(横浜市金沢区、熊谷洋平社長)は、メタバース(仮想空間)を活用した合同企業説明会を事業化した。年2回の開催で浸透を図る。説明会には企業の研究者やエンジニアが遠方からアバター(分身)で参加でき、専門分野について具体的に会話することが可能だ。“別室”で博士課程学生が個別のプレゼンテーションをするなど、多人数が前提の対面・ウェブの就職活動イベントとは異なる効果が得られる。

tayoは2019年設立。求人ポータル(玄関)サイトと研究者プロフィルを統合したウェブプラットフォーム(基盤)「tayo.jp」を運営している。利用企業は研究者が個人プロフィルを載せて登録、専門的な会話を通じて人材をスカウトする。tayo.jpの登録者数は約3000人、閲覧ユーザー数は年間約9万。

tayoはこのプラットフォームと連携したブラウザーベースのメタバースシステムで、合同企業説明会を開いている。メリットはOB・OG訪問会や学会のコミュニティーのように、アバターを通じて1対1で専門的な会話が、気軽にいくつもできることだ。遠方から短時間でも参加できる。名刺交換をし、プラットフォームの個人情報を見て研究プレゼンテーションに切り替えるなど、個別に進められる。

1月に開いた2回目の説明会の参加学生は約150人で半分が博士学生、次いで修士課程学生が多かった。企業はディープテックのスタートアップ(SU)など9社が参加。大手製薬会社は博士学生14人を含む19人と連絡先を交換した。

メタバースの運用はコストがかかるが、SUなどから博士人材採用のニーズが強い点に対応した。理系博士学生は高スペックのパソコンを持ち、メタバース利用に関する支援も少なくて済むという。

日刊工業新聞 2023年02月09日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
メタバースを使った合同企業説明会は、まだ珍しい最新スタイルだ。新しモノ好きの学部生や、感度の高い学部生を採用したい企業で、それなりに大規模なものが開催されたと耳にしている。これに対してtayoは博士人材を中心とした就職・採用に重点を置く。アバターでの参加は、遠隔地の大学の学生にとってメリットがあるのは学部生向けでも共通だが、「遠隔地が多い工場や研究所のエンジニアやリサーチャーが、仕事の合間に1時間ぱっと参加し、専門的な会話をし相互理解を深める」というメリットが生きるのは、博士人材向けならではだ。学生側の個別プレゼンに切り替えられる点もユニークで、話が進みやすいだろうと感じた。

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