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ソニーグループ社長に昇格、十時裕樹さんはこんな人

ソニーグループ社長に昇格、十時裕樹さんはこんな人

握手する十時次期社長(右)と吉田社長

ソニーグループは、4月1日付で十時裕樹副社長兼最高財務責任者(CFO、58)が社長に昇格する人事を発表した。最高執行責任者(COO)とCFOも兼務する。吉田憲一郎会長兼社長(63)は代表権のある会長となり、引き続き最高経営責任者(CEO)を担う。ソニーGの社長交代は5年ぶり。エレクトロニクス中心の事業構造から、ゲーム、映画、音楽、半導体、金融を加えた6事業を柱とする構造へと転換しており、電気自動車(EV)にも参入する。変化の激しい経営環境で、さらなる成長を目指すため、経営体制を強化する。

2日会見した吉田社長は「外部環境の変化が激しく、テクノロジーの大きな変化や地政学リスクの高まりがあるタイミングで経営体制を強化し、キャピタルアロケーション(資本配分)、事業間連携、事業ポートフォリオマネジメントを強化することが必要と判断した」と社長交代を決めた理由を説明。十時氏は「顧客に選ばれ、社員を元気にし、優秀な人材を集め、企業価値を高め、社会に還元するポジティブスパイラルを生み出す」と意気込みを示した。

十時氏は主に財務畑を経験し、ソニー銀行の設立も主導した。通信事業のソネットエンタテインメント(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)で同社社長だった吉田氏を支え、ともにソニーに復帰。スマートフォン事業のトップも務め、18年に執行役専務兼CFOとなり吉田体制を支えてきた。

ソニーGは23年3月期連結売上高予想のうち、5割以上をゲーム、映画、音楽といったエンターテインメント事業で稼ぐ計画。19年に吉田社長が会社の存在意義(パーパス)として、顧客などに「感動」をもたらすことをうたい、事業構造を着実に転換してきた。

十時次期社長は、デジタル技術、人工知能(AI)、イメージセンサーといったテクノロジーを活用し、EVなどのモビリティーやメタバース(仮想空間)といった空間で感動を提供し、次の成長を目指す方針だ。

【略歴】十時裕樹氏 87年(昭62)早大商卒、同年ソニー(現ソニーグループ)入社。02年ソニー銀行代表取締役。13年ソネットエンタテインメント(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)副社長。18年ソニー代表執行役専務CFO、20年副社長。山口県出身。

素顔/ソニーグループ社長に就任する十時裕樹(ととき・ひろき)氏

「一言で言えば『成長』だ」と自らのスローガンを語る。吉田社長も「成長への強い意志を強みとして上げた」と、2022年7月に指名委員会と十時氏の社長就任の議論を始めた時のことを振り返る。

経営環境の変化が激しい時代に対し、「グループのレジリエンス(強靱(きょうじん)性)を高めるカギは事業と人材の多様性の進化」と説く。「さまざまな属性、経験、専門性を持つ人材が集まり企業も個人も成長する姿を目指す」。

財務畑が長いが、ソニー銀行を創業したベンチャーマインドやスマートフォン事業で大組織を指揮した経験などを併せ持つ。「穏やかだが、頭が切れる」との人物評や、「次期社長候補と見られており、就任に違和感はない」との声も聞かれる。

信条に「経営の要諦は勇気と忍耐にあり」との言葉を上げる。「リスクを見極め決断する勇気と、逆風や矛盾に耐える忍耐力がともに必要」と自身に言い聞かせる。(編集委員・錦織承平)

日刊工業新聞 2023年02月03日

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