製品安全を経営の柱に位置付けるパナソニック、風化させない「苦い経験」
パナソニックくらしアプライアンス社は、グローバル統一の安全方針として「品質は企業の命、お客様第一の経営に徹する。製品安全はすべての業務に優先する」を掲げ、全従業員が製品安全優先の「意識」と「行動」を実践することを誓い合っている。洗濯機、掃除機など日々の暮らしに欠かせない製品の製造・販売を手がけるだけに、製品安全への考えは何よりも重視すべき経営の柱として位置付ける。
旧社名の松下電器産業時代、FF式石油暖房機器で重大製品事故が発生した苦い経験がある。「当社の歴史の中で痛恨の極み。安全方針を徹底的に順守するだけでなく、事故を教訓とし、風化させてはいけない原点として事業部内で啓発活動している」と藤本勝ランドリー・クリーナー事業部長は製品安全への思いを語る。
このような製品安全の考えで洗濯機などを開発・製造している中、時代の流れに沿った新たな取り組みが求められている。IoT(モノのインターネット)対応製品が増え、誤作動の誘発を狙う悪意ある攻撃が想定される。これに対応し「製品セキュリティポリシー」を定めた。また、コロナ禍で海外サプライヤーの現地監査ができない状況が続いていることに対し、書類上の管理状況を再検証し製品安全上の問題点を把握した上で、その改善に向けたルール化を図った。さらに材料を精密に分析する体制を構築し、調達先が勝手に材料を変更する「サイレントチェンジ」に対応。製品安全への自衛力を強化している。
取り組みは自社だけにとどまらない。誤使用事故の発生を防ぐ防護策の提供や注意喚起の強化、工業会とも連携した業界をあげての防止策を推進する。「日本の家電メーカーの責任として、業界の中でもしっかりとした方向付けを先導していく」と力を込める。
今後の製品安全への取り組みについて藤本事業部長は「地味な取り組みだが、何より意識と行動を持ち続けることが大事。モノづくりの基軸に安全を置き、とにかく愚直に定めた方針を貫き続けたい」と意気込む。
際限ない取り組みの継続は難しい。だからこそ「製品安全を事業部のDNAに埋め込みたい。そのためのPSアワードへの挑戦でもあった」(同)と強調する。この取り組みは、社員の意欲を高めただけでなく、企業として存在意義の再認識につながっている。
【会社概要】
▽設立=1951年
▽代表者=社長・松下理一氏
▽所在地=滋賀県草津市野路東2の3の1
▽従業員数=974人
▽事業内容=電化製品などの生産、販売、サービス
▽URL=https://holdings.panasonic/jp/
製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)
製品安全に積極的に取り組む製造事業者、輸入事業者、小売販売事業者、各種団体を企業単位で広く公募し、厳正な審査の上で「製品安全対策優良企業」として表彰する。各企業が扱う製品自体の安全性の評価ではなく、製品安全活動に関する取り組みを評価する。受賞企業・団体は「製品安全対策優良企業ロゴマーク」を使用し、製品安全対策の優良企業・団体であることを宣伝・広報できる。
【関連技術】 パナソニックも注目する元白熱電球メーカーの変身ぶり