安全は「ど真ん中にある軸」、建築金物商社が新事業に取り入れた「意地悪試験」
創業は大正時代。金物卸売商として初代が事業を立ち上げ、必ずしも順風満帆とはいかないものの、右肩上がりで業績を伸ばしてきた。戦後の復興期を経て「日本一の金物卸売商」と言われた時代もあった。しかし、社会経済の発展により住宅建設や物の流通が変化し、これまでのような住宅資材の販売を継続するだけでは生き残れない状況が見え始めてきた。そこで問屋としての機能だけでなく、独自技術を生かした開発で自社製品を作ることになった。
「今後、新築は減るがリフォームは増える。人口は減るが高齢者は増える」と、マツ六(大阪市天王寺区)の3代目となる松本將社長は先代から言われた忘れられない言葉を語る。取扱商品を増やし営業エリア拡大にまい進してきたが、生き残りをかけ商社機能にメーカーとしての機能を加えることになった。特に力を入れたのが先代の考えに沿った高齢者向けリフォーム事業。その中で、介護保険の給付対象となる手すりや踏み台を開発したほか、需要の多様化に合わせてレンタル費用が給付される福祉用具も揃えた。
高齢者向け製品に求められたのが高品質と耐久性。安全性が伴うのは言うまでもない。さらに誤使用や誤設置までを想定し完璧な製品づくりを目指したという。「安全は新事業のど真ん中にある軸。徹底して安全性を確認しないと、万が一の事故が起こらないか不安で仕方ない」と松本社長は打ち明ける。こうした考え方から始めたのが「意地悪試験」と呼ばれる手法だ。
クレーム減で生産性向上
マツ六本社地下に設置したクリエーターズラボで商品ごとに耐荷重、連続荷重などで商品をいじめ尽くす。自社製品の安全性を客観的に検証し、課題があれば製品改良につなげていく。「ここまでやらないと枕を高くして寝られない」(松本社長)。製品安全への注力はコスト増ではなく、逆にクレーム対応など後ろ向きの仕事が激減して生産性向上になるともいう。
ここまで対応しても避けられないのが消費者の誤使用や施工者による誤設置。これらを防ぐため自社ウェブサイトで正しい使用法や設置の仕方を動画で配信。販売店ではリーフレットを配布するなど積極的に取り組んでいる。また、過去のクレーム情報などを社内データベースに格納し一元管理。開発、営業だけでなく全社で情報を共有することで事故防止を図っている。
松本社長は「高齢者向けといっても一括りにはできない。スマート、アクティブな高齢者も増えているので機能だけでなくデザイン性を重視し、グリーン対応が求められる」と語る。時代の変化に対応し、消費者ニーズを考え、先を見た商品開発に余念がない。これに併せて製品安全への取り組みも高度化させていく方針という。
【会社概要】
▽設立=1948年8月
▽代表者=代表取締役社長・松本將氏
▽所在地=大阪府大阪市天王寺区四天王寺1の5の47
▽従業員数=251人
▽事業内容=住宅関連、高齢者リフォームの資材開発・販売
▽URL=https://www.mazroc.co.jp/
製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)
製品安全に積極的に取り組む製造事業者、輸入事業者、小売販売事業者、各種団体を企業単位で広く公募し、厳正な審査の上で「製品安全対策優良企業」として表彰する。各企業が扱う製品自体の安全性の評価ではなく、製品安全活動に関する取り組みを評価する。受賞企業・団体は「製品安全対策優良企業ロゴマーク」を使用し、製品安全対策の優良企業・団体であることを宣伝・広報できる。