皮膚炎、もう“かかない”…佐賀大・富山大が解明したアトピーのかゆみ原因
アレルギー反応の中でも皮膚に炎症がみられる「アトピー性皮膚炎」の患者は年々増加傾向にあり、小児の10%がかかっていると言われている。佐賀大学や富山大学の研究チームは、アトピー性皮膚炎のかゆみの原因となる物質とその反応機構を突き止め、かゆみを抑える薬となり得る化合物を発見した。今後はベンチャーと製薬開発に取り組む。多くの人たちが発症している皮膚炎の症状改善につながると期待される。(飯田真美子)
たんぱく質が神経刺激
アトピー性皮膚炎は強いかゆみを示すことが特徴で、日常生活の支障になるだけでなく同皮膚炎の悪化の原因にもなる。ただアトピー性皮膚炎は原因が解明されておらず、ほこりやダニ、食べ物といったアレルゲン物質やストレスなどが重なることで発症すると言われてきた。薬物治療法はステロイドなどの抗炎症外用薬や免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤が挙げられるが、効き目には個人差がありすべてのかゆみに効くわけではない。そのためアトピー性皮膚炎原因の解明と治療薬の開発が課題となっていた。佐賀大の出原賢治教授は「約10年前にアトピー性皮膚炎のカギとなる物質を発見した。この10年で炎症に関わる機構や治療薬に向けた研究を進められた」と強調する。
研究チームは、顔面に局所的に強いかゆみを示すように遺伝子を組み換え、アトピー性皮膚炎を引き起こさせたモデルマウス「FADSマウス」を開発した。アトピー性皮膚炎患者の皮膚組織で作られる物質の中でも、過剰に産生されているたんぱく質「ペリオスチン」に注目。FADSマウスからペリオスチンの遺伝子を欠損させると、顔面のかゆみの症状が改善していることが分かった。皮膚組織を調べると皮下組織が増しており、炎症細胞が抑制することを見いだせた。ペリオスチンは知覚神経に作用してかゆみを引き起こすことが考えられる。
アトピー性皮膚炎の治療薬の開発にも意欲的だ。これまでに製薬企業が薬剤として開発した化合物で、ペリオスチンの阻害剤である「CP4715」に着目。アトピー性皮膚炎の原因がペリオスチンであることが分かったので、同阻害剤をFADSマウスに投与したところ、かゆみの改善を確認できた。
CP4715は安全性の確認がある程度されているため、治療薬として応用・開発する期間の短縮が可能になるとみられる。アトピー性皮膚炎に対するCP4715の効果については特許を現在申請中で、CP4715を同皮膚炎の治療薬として認められるようベンチャーとともに研究開発を進める。成果が得られたことで、アトピー性皮膚炎の治療薬の実用化に向けた研究開発が一気に加速する。出原教授は「CP4715が治療薬に承認されることを目指して研究を続けたい」と意気込みを語った。アトピー性皮膚炎の原因は一つに留まらない可能性が高く、多くの原因物質を特定する必要がある。個人の原因にあった治療薬が開発されることが求められる。