「レクサス」強く…トヨタ社長に昇格、佐藤恒治氏の素顔とは?
トヨタ自動車は26日、豊田章男社長(66)が4月1日付で退任し、佐藤恒治執行役員(53)が社長に昇格する人事を発表した。豊田社長は代表権のある会長に就く。豊田社長が進めてきた商品や地域を軸とした経営改革に一定のめどがついたことや、コロナ禍でも2022年3月期に過去最高の連結決算を達成するなど、モビリティーカンパニーへの変革の土台ができたと判断した。
自社配信するオンライン番組で、豊田社長は社長交代を決めたきっかけは内山田竹志会長(76)から退任の申し出があったことだと明かし「トヨタフィロソフィーを作ったことや体質改善など、バトンタッチの土台ができた」と説明した。その上で「これまでは私の個人技で引っ張ってきた面があるが、トヨタが自律的に成長するには、私から離れた所でチームが適材適所でやっていくことにかけたい」と、経営をサポートする姿勢を表明した。
今後の自身の役割を「取締役会議長とマスタードライバーだ」とし、自動車産業や日本の産業界を念頭に「自動車は日本の競争力のど真ん中だ。貢献していきたい」と話した。
佐藤氏を選んだ理由については「若さと車好きであるほか、トヨタの思想・技・所作を車づくりの現場で体現してきた」ことを挙げた。「新経営陣のミッションは、モビリティーカンパニーへのフルモデルチェンジだ」と期待を込めた。
佐藤氏は次期経営チームについて「トヨタが積み上げてきた共通の価値観を共有しているメンバー。スピード感のある経営をしたい」とし「継承と進化をテーマに創業の理念を大事にしながら新しいモビリティーの形を示したい」と述べた。
豊田社長はリーマン・ショック直後の09年6月に14年ぶりの創業家出身者として就任。10年の大規模リコール(回収・無償修理)問題やそれに伴う米議会での公聴会出席、東日本大震災などいくつもの経営危機を乗り越えてきた。就任当初から「いいクルマづくり」を掲げ、「カローラ」といった主力ブランドの刷新、スポーツ車の復活などを実施。新設計思想「TNGA」を採用し、損益分岐点を下げるなどの経営体質強化も進めてきた。
内山田会長は4月1日付で会長を退任し、6月に開かれる株主総会を経て代表取締役も退く。
【略歴】佐藤恒治氏(さとう・こうじ) 92年(平4)早大理工卒、同年トヨタ自動車入社。20年執行役員、同年レクサスインターナショナルプレジデント。
佐藤恒治氏の素顔
朗らかな笑顔で現場を引っ張りながら、時に厳しさも見せつつ決めた目標に向けて突き進む実行力のある人だ。「退屈だ」との評価を受け、重要テーマの一つだったレクサスブランドの改革や、「いいクルマづくり」につながるモータースポーツ活動など、トヨタ自動車の強さを担う事業も着実にこなしてきた。
「僕はとにかく車が大好き。そうでなければ、こんなに大変な仕事はやっていられない」との言葉通り、レース現場ではエンジニアと一緒になって、自筆のイラストやグラフを使いながら熱い議論を交わす姿が印象的。その情熱を次は「トヨタらしいモビリティーカンパニーづくり」で示す必要がある。
豊田章男社長からは「自分らしくやれ」とエールを送られた。「代わりはできないが失敗してもいい土壌などは、新たな経営チームに継承する」。現場重視を貫きながら挑戦を続ける。(名古屋・政年佐貴恵)
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