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高速パーキングの利便性高める、西菱電機が映像・無線技術×AIで創造する価値

高速パーキングの利便性高める、西菱電機が映像・無線技術×AIで創造する価値

他の知見を取り入れ相互作用の最大化を狙う。鳥取大の西山正志教授(左端)、西菱電機の西井希伊社長(右から2人目)、鳥居紀彦執行役員(右端)

西菱電機は、強みである映像や無線技術に人工知能(AI)技術を組み合わせて新たな価値を創造し、新サービスの創出に注力している。このほど鳥取大学工学部電気情報系学科パターン認識工学研究室の西山正志教授のグループと、高速道路駐車場映像を高度に活用し、利用者の満足度向上につなげる共同研究を始めた。鳥居紀彦執行役員は「(専門の)研究組織がない会社が開発するのは困難だ。知見を有する大学に有用なアルゴリズムを選別してもらえるのは価値がある」と意義を明かす。

西菱電機は約10年前、新東名高速道路のパーキングエリアに、画像処理技術を用いて満・空車判定し、車両を空きスペースに誘導する「駐車場満空監視誘導システム」を納入した。駐車スペース枠内の車両の有無を95%程度の精度で判定できるが、同様のシステムはネットワークカメラの普及やディープラーニング(深層学習)の実用化などで従来より安価に提供できるようになった。「年齢、性別などの属性や人の転倒、不審者、事故などを検知できたら利便性が高まる」(鳥居執行役員)としてシステム高度化を図る。

鳥取大との共同研究では西山教授が提唱する独自の指標「活発度」を用い、動画に映る2人以上のグループ行動を分析して「盛り上がり度」を測り、施設利用者の満足度をみるといったマーケティングなどへの応用を目指すもの。人と人が歩きながら並ぶ・互いを見る・雑談するシーンで、人ひとりにつき関節など7000カ所の動きを数値化して可視化し、相互作用がどれだけ行われているかを姿勢の時系列変化の類似性と非類似性を計算し算出する。

人物間での姿勢の時系列変化の類似性・非類似性を計算し活発度を測定

例えばサービスエリアに駐車後、降車時に40%だったグループ間の活発度が、施設利用後に80%に高まった場合には満足度が高かった、という使い方が可能。他に比べ活発度が低いグループはけんかなどトラブルが発生する可能性が高い、といった応用も想定する。

まずは今後3年間でリアルシーンで撮影されたデータでの活発度の自動算出アルゴリズムの頑健性を確認し、実用化を目指す。実際の現場でスムーズにアルゴリムが動作するのかなど実用化には越えるべき壁もたくさんあるが「事業化の有無に関わらず(開発の)テーマは大きくしておく必要がある。共同研究は新たな情報を得られ、開発メンバーのアイデアが凝り固まらずに済む」(鳥居執行役員)と、新事業創出以外のメリットも期待。他の知見を取り入れ相互作用の最大化を狙う。(大阪・大原佑美子)

日刊工業新聞 2022年12月02日

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