コロナ変異種に有効な抗体。北海道大学が作製に成功
北海道大学大学院の前仲勝実教授、喜多俊介特任助教らは国立感染症研究所などと共同で、新型コロナウイルス変異株や重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスなどに有効な抗体の作製に成功した。新型コロナのアルファ株やガンマ株の変異株にも高い中和活性を示した。ハムスターを用いた感染実験の結果、抗体医薬品と同等の予防・治療効果を持つことが分かった。コロナウイルス治療薬開発への寄与が期待される。
コロナウイルスを中和する抗体は、抗体カクテル療法などに利用されている。だが、変異株の中には中和抗体から逃避するものもある。そのため、新規治療薬の開発では変異株に対しても活性を失わない「交差中和抗体」の特定や、その中和メカニズムの解明が求められている。
研究グループは、鳥取大学とTrans Chromosomics(鳥取県米子市)が開発した完全型ヒト抗体を作るマウスから、有望な交差中和抗体候補としてヒトモノクローナル抗体「NT―193」を単離した。
同抗体は、抗体カクテル療法に使用されている抗体と比べ、従来株を同程度の高い活性で中和した。さらに抗体の定常領域の種類を変えることで中和活性が増し、変異株やSARSコロナウイルスにも有効性が示された。
また、同抗体が標的とするスパイクたんぱく質に結合する様子をX線結晶構造解析で調べた。その結果、同抗体は受容体結合領域とコロナウイルスの保存部位の両方を認識することが分かった。これにより、幅広い交差反応性と中和活性を示していると考えられる。
日刊工業新聞2021年9月16日