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ホンダ・住生など導入も…勤務間インターバル制度、本格普及しない背景と課題

本格普及へ経営層の理解不可欠

ホンダや住友生命保険、森永乳業、オンワードホールディングスが相次いで導入するなど勤務間インターバル制度への関心が高まってきている。政府も2019年から事業主に対する努力義務に規定した。ただ政府目標の15%にはまだ届かず、本格普及はこれから。その背景や課題を探った。(幕井梅芳)

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けること。注目度の高まりの背景には、長距離バスの事故や過労死問題など多くの社会問題がある。

労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センターが実施した過労死に関する調査によると、労働時間が長いと脳卒中リスクが高まることが判明。また仕事のストレスを有する男性は特に死亡率が高いことが分かった。同センターの久保智英上席研究員は「労働時間と仕事のストレスは健康状態に関連する」と分析している。

政府は「働き方改革」の一環として、勤務間インターバル制度の導入について、19年に企業へ努力義務とした。しかし、勤務間インターバル制度導入企業は、現在は全体の5・8%(22年)にとどまっており、25年までに15%という目標達成にはほど遠い。

導入が進まないのは時間的、金銭的な負担が小さくないためだ。勤務間インターバル制度を守らない従業員にどう対処していくか、時間をカウントするツールに何を使うかなど手間がかかるデメリットもある。

これに対し、起業以来17年間、勤務間インターバル制度を導入し、増収増益を続けてきたワーク・ライフバランスの小室淑恵社長は、「経営者や管理職が勤務間インターバルの真の意義を理解していない」と指摘する。

経営層は「勤務間インターバルは労働時間を短くするので業績が低下する」と思い込みがちだ。ただ実際には、11時間のインターバルは100時間の残業ができる制度であり、業績にマイナスの影響はない。「1日7時間の睡眠により、日中の生産性向上に加えて、メンタル疾患による休職者も減り、業績向上に大きな効果がある」(小室社長)という。

経営層と管理職が休むことの必要性を熟知するとともに、人的資本を疲弊させずに持続的な経営が可能な知識を習得することが求められている。

日刊工業新聞 2023年01月10日

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