業績改善ないが…賃上げ「実施」増加の背景
東京商工会議所は会員企業を対象に賃上げや価格転嫁の動向について調査した。賃上げを実施した企業は49%と2021年度調査から9・8ポイント増加した。ただ、7割近い企業が業績改善がなくても賃上げを実施している。価格転嫁は「全く転嫁できていない」が22・9%など、厳しい状況が続いていることが明らかになった。
賃上げは全業種で増加し、中でもサービス業が21年度比13・5ポイント増の47・7%と増加幅が最も大きくなった。
賃上げを実施した企業の経営状況は「業績改善」は33・1%。一方「業績悪化」と「横ばい」が合わせて67%となった。
賃上げ実施の理由は「社員のモチベーション維持・向上」が90・5%と最多で、次いで「人材の流出を防ぐため」が51・8%。「物価が上昇」が43・1%と前回調査から34・5ポイントと大幅に上昇した。
業績にかかわらず、社員の意欲向上や生活の維持、人材確保に賃上げが必要と考える経営者が多いことがうかがえる。
価格転嫁は、原油・原材料価格高騰や円安によるコスト増加分について「全く転嫁できていない」と「転嫁は半分に満たない」が合わせて52・6%となった。転嫁できない理由については「需要が減少しているため」が33・8%、「競合他社が販売価格を上げていないため」が31・3%などとなった。
業種別ではサービス業や建設業で価格転嫁の実施が遅れていることが分かった。「施工中の工事は価格が高騰する前に契約したもので、追加の費用請求ができない」(建設業)などあきらめの声もあった。
一方で「当社にしかできないものは価格転嫁が容易にできた」(治工具製造)と独自性の強みを発揮した声も聞かれた。
日刊工業新聞2022年9月16日