31年ぶりに3%上昇…物価高が止まらない、今後の見通しは?
総務省がまとめた9月の消費者物価指数(CPI、2020年平均=100)は生鮮食品を除いた総合指数が102・9と、前年同月比3%上昇した。消費増税の影響を除けば1991年8月以来、約31年ぶりの上昇幅となった。ただ、原材料価格高によるコストプッシュ型のインフレのため、上昇率は23年以降、2%以下に鈍化する見通し。日銀が掲げる持続的な2%の物価安定目標を達成できる状況ではない。
総合指数の品目別では電気代が前年同月比21・5%、ガス代が同19・4%上昇。食料品では食用油が同37・6%、生鮮魚介のサケが同26・8%、食パンが同14・6%上昇した。
今後の物価見通しについて、日銀の黒田東彦総裁は「エネルギーや食料品などの価格上昇により、年末にかけ上昇率を高める可能性が高い」と指摘する。エコノミストからも「12月まで3%台の上昇が続く」との声がある。
ただ、黒田総裁は「年明け以降は海外からのコストプッシュ要因の押し上げ寄与が減衰することで23年度の物価上昇率は2%を下回る水準まで低下する」と予想する。エコノミストからも「賃金上昇が低水準で推移する限り、23年度のCPIの上昇率は大幅に鈍化する」との声がある。
日銀が急速な円安にもかかわらず金融緩和を続ける狙いは、物価高を吸収できる賃金上昇を促すことだ。経済を下支えし、賃金上昇を伴う緩やかな物価上昇を実現することで持続的な2%の物価安定目標を達成できる。
東京商工リサーチによると、23年度に賃上げ実施を予定する企業は前年度比0・9ポイント減の81・6%。急激な物価上昇の中でも賃上げ実施を予定する企業が多いが、5%以上の引き上げを予定する企業は4・2%にとどまる。連合による23年の春闘の賃上げ要求水準は物価高を踏まえ、5%程度と見込まれる。賃上げ率の上昇が低水準となれば、金融緩和政策の出口も遠のくことになる。