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「マーチ」「オリンパスカメラ」「ドロップス」…。今年幕を下ろしたロングセラー製品たち

「マーチ」「オリンパスカメラ」「ドロップス」…。今年幕を下ろしたロングセラー製品たち

小型車「マーチ」

2022年は数々の製品やサービス、ブランドが終焉(しゅうえん)を迎えた。消費者の嗜好(しこう)変化、環境対応の難しさ、原材料価格の高騰など理由はさまざまだが、人々に愛されてきたロングセラーや、人々に強いインパクトを与えた製品たちの軌跡は、今後も日本の産業発展の大きな糧となる。

4輪「マーチ」 国内向け40年の歴史に幕

日産自動車は7月にタイで小型車「マーチ=写真」の国内向け車両の生産を終了した。1982年に発売。排気量1000ccのエンジンを搭載し、使い勝手や燃費性能を追求した。公募した車名には約560万通もの応募があり、関心を集めた。発売後は経済性や居住性などが評価され、女性や若者に受け入れられた。在庫がなくなり次第販売を終え、40年の歴史に幕を下ろす。

夏には国内で高級セダン「シーマ」や同「フーガ」の生産も終了した。新たな騒音規制への対応が求められ、開発コストなどを総合的に判断して改良を見送った。国内ではスポーツ多目的車(SUV)などの人気が高まりセダン市場が縮小。両車種の販売も伸び悩んでいた。

4輪「NSX」 安全面など規制強化で判断

ホンダは高級スポーツカー「NSX」、軽自動車スポーツカー「S660」の生産を終了した。同社は経営資源を電動化戦略に集中する方針。また安全面や環境面の規制強化に対応するのが難しいと判断した。

NSXは運動性能と運転しやすさの両立を図り、人気を集めた。集大成として日本では8月に「タイプS=写真」を発売した。

高級スポーツカー「NSX」

S660は2015年発売の2人乗りスポーツカー。軽ながら旋回性能が高く、開発責任者が20代だった点も話題となった。21年に生産終了を発表後、注文が殺到したことから追加販売を決定。3月に生産を終えた。

このほかハイブリッド車(HV)「インサイト」の国内生産も終えた。セダン車の人気低迷が響いた。

2輪「CB400SF」 環境規制で終了

ホンダは10月、中型2輪車「CB400スーパーフォア(SF)=写真」の日本向け生産を終えた。直列4気筒エンジンを搭載したロードスポーツバイク。1992年の発売以降、日常使いや山道走行など幅広い用途に対応できる点が人気を集めた。扱いやすさも特徴で、教習車としても存在感を示した。

中型2輪車「CB400スーパーフォア(SF)」

生産終了の背景にあるのは環境規制の強化だ。11月から原付き1種を除く2輪車に「2020年排出ガス規制」が適用された。対応にコストがかさむことから、ホンダはCB400SFなど同規制に適合しない一部車種の生産終了を決めた。

カメラの「オリンパス」、新ブランドに順次切り替え

カメラの「オリンパス」ブランドが終焉に向かう。オリンパスの映像事業を前身とするOMデジタルソリューションズ(東京都八王子市)が、レンズを含め新ブランド「オーエムシステム」に順次切り替えていくと10月に公表した。カメラ関連のほか、双眼鏡やICレコーダーも切り替え対象となる。

OMデジタルソリューションズ「OM SYSTEM OM-1」

オリンパスブランドのカメラは、1936年に「セミオリンパスI型」が発売されて以来、長く愛されてきた。OMデジタルソリューションズが3月に発売した「OM SYSTEM OM―1=写真」が、オリンパスのロゴを冠する最後のミラーレスカメラとなった。

マキタ、エンジン製品 バッテリー式に集中

電動工具大手のマキタは3月、1960年代ごろから販売してきた芝刈り機やチェーンソーなどエンジン製品の生産を終えた。脱炭素社会を見据え、バッテリーを使う製品に経営資源を集中し「充電製品の総合サプライヤー」へ突き進む。

マキタが生産終了した製品の一つ、エンジン式の草刈り機

エンジン製品の年間売上高は約100億円。ただ、園芸機器の市場が大きい欧州では脱炭素の観点から、エンジン製品を使用する庭園業者が減り始めているという。「選択と集中」(後藤宗利社長)として、バッテリー式に注力する方針だ。

かつて、バッテリー製品は「『仕事道具として求める出力に至らないのでは』という懸念があった」(同社)。その潮流を変えたのが2005年に投入したリチウムイオンバッテリーを使う機器。その後、売上高は順調に伸び、今では年間約700億円。脱炭素を追い風に、バッテリー製品で園芸機器市場を刈り取る構えだ。

ブラウザー「IE」サポート終了 「エッジ」利用を推奨

米マイクロソフト(MS)のインターネット閲覧ソフト(ブラウザー)「インターネット・エクスプローラー(IE)」は、6月にサポートを終了した。27年の歴史に一つの終止符が打たれた。MSは、IEの後継で、よりセキュリティー水準の高い「マイクロソフトエッジ」の利用を推奨している。

インターネット・エクスプローラーのサポート終了を知らせるマイクロソフトのウェブサイトの一部

IEのみで動作するよう作成されたウェブコンテンツは「IEモード」で閲覧が可能で、同モードは2029年までサポート予定。

特急ロマンスカー・VSE 旅行者に愛され2000万人が乗車

3月11日に通常ダイヤでの定期運行を終えた特急ロマンスカー・VSE(50000形=写真)。2005年3月の就役以来、小田急電鉄のフラッグシップモデルとして沿線住民や旅行者に愛され、2編成で延べ600万キロメートル超を走行し、約2000万人が乗車した。

特急ロマンスカー・VSE(50000形)

シルキーホワイトの外観やロマンスカーの代名詞である展望席を設けた。客室は約4メートルの連続窓のほか、高さ2・5メートルの天井やゆとりのあるシートピッチ(前後間隔)を採用し、高い居住性と快適な乗り心地を追求した。

同社では、「臨時列車によるオリジナルツアーなどのイベントを開催しており、23年秋ごろを予定するラストランまでの時間をぜひお楽しみください」とコメントしている。

「サクマ式ドロップス」、原材料高騰で経営が悪化

映画『火垂るの墓』にも登場し、長年愛されてきた「サクマ式ドロップス=写真」。製造元である佐久間製菓(東京都豊島区)が23年1月に廃業することを11月に決めた。

「サクマ式ドロップス」

同社によるとサクマ式ドロップスの製造を始めてから114年。だが、最近は新型コロナウイルス感染症拡大の影響による販売減や原材料・エネルギー価格の高騰、人員確保の問題などで経営が悪化していたという。

食品業界を取り巻く環境が悪化する中、ロングセラー商品がその波にのまれ、また一つ消える。

日刊工業新聞 2022年12月27日

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