JR九州は3期ぶり営業黒字化なるか、カギ握る固定費削減
固定費削減“スリムな鉄道”に
JR九州は2023年3月期に鉄道事業の3期ぶりの営業黒字化を目指す。カギは構造改革「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)」による固定費削減だ。仕事のやり方や事業の変革により、利益を生む体質をつくる。足元の収支改善と同時に、将来の維持更新投資に伴う減価償却費の積み上がりなどを織り込んでも、費用水準を20年3月期並みに抑える。
BPRはコロナ禍による収支悪化に対して「社員が知恵を出し、考え方を変えて固定費を削減する」(古宮洋二社長)施策として21年3月期に始まった。落ち込んだ鉄道収入に対する費用低減の手段であり、将来に向けたスリムな鉄道事業の土台づくりでもある。
目標額140億円は基準となる20年3月期の営業費用1451億円の約1割にあたる。BPR開始時の財務状況を踏まえて「まずお金を使わずにいかにコストを下げるか」(古宮社長)で動き出した。2年目の22年3月期には40億円分の効果を達成。営業損益は220億円の赤字となったが損失幅の縮小に貢献した。
次の段階では新技術活用を含めた効率的な鉄道づくりを深化させる。運行ダイヤ最適化、ワンマン運行拡大、デジタル技術による設備点検の適時化などで効果を上げる。9月開業の西九州新幹線では運転士が車掌と車両点検もこなすマルチスキル化を実現した。
BPRの効果は22年4―9月期で69億円に届いた。「第2四半期で半分は効果が出ている」(松下琢磨取締役常務執行役員最高財務責任者)と順調だ。通期では収支に140億円がフルに貢献し営業利益1億円の黒字を見込む。コロナ前の20年3月期の同利益200億円には遠いが反転の大きな一歩になる。他方、資源高などもある中で、黒字化には効果の最大化が不可欠だ。
BPRの効果は現中期経営計画の最終年度25年3月期にも続く。事業全体を筋肉質にすることで、予期せぬ収益減に見舞われた場合でも“利益を生む”鉄道を走らせる構えだ。