テレワーク特需は終わった.…契約数伸びぬ「光回線」、求められるテコ入れ
「大容量」「IoT」向けテコ入れ
光回線サービス市場の伸びが鈍化している。MM総研(東京都港区)の調査によると、2022年4―9月期の家庭用光ファイバー通信回線(FTTH)契約数の純増数は前年同期比32・8%減の67万3000件で過去最大の減少となった。テレワーク特需の一巡が響いており、少子高齢化などで中長期の見通しも明るくない。シェア首位のNTT東日本・NTT西日本は、商品ラインアップ見直しといったテコ入れが必要になりそうだ。(張谷京子)
光回線サービス契約数の純増数は、コロナ禍におけるテレワーク需要の拡大に伴って20年4―9月期から急増。MM総研によると、19年度通期が133万7000件だったところ、20年度通期は194万5000件に伸びた。ただ、21年10月―22年3月期以降、純増数は低調に推移。22年度通期は125万2000件で、コロナ禍前の19年度の水準を下回ると予測する。
今後についても、MM総研の横田英明常務は「(20―21年度に)想定以上に需要の先食いが起こった。23年度以降、コロナ禍前の市場を若干下回るのでは」と見通す。光回線の契約純増数は中長期では「半期で60数万件レベル」(横田常務)の横ばいになるとしているが、22年度以降、しばらくはテレワーク特需の反動減が続く可能性はありそうだ。
NTT東・NTT西の光回線事業も苦戦している。NTTは、光回線サービス「フレッツ光」および「コラボ光」の純増数で23年3月期通期に65万件を目指しているが、22年9月末時点では22万1000件と、目標値の半分にも到達していない。NTT東の渋谷直樹社長は「過去3年間は目標を上回って着地してきたが、22年度は厳しい状況が続いている」と認める。
光回線事業の成長鈍化を食い止めるべく、NTT東は大きく分けて二つの施策に取り組む。一つは、光回線サービスのラインアップの見直しだ。
データ利用量が少ないユーザー向けの「フレッツ光ライト」のサービス提供を25年3月に終了する一方、最大通信速度が毎秒約10ギガビット(ギガは10億)の高速光回線サービス「フレッツ光クロス」の提供エリア拡大を進めている。オンラインゲームなど、大容量データ通信が必要なサービスの利用が拡大していることに対応する。
二つ目は、デジタル変革(DX)の潮流を背景に需要拡大が見込めるIoT(モノのインターネット)向けサービスの強化。渋谷NTT東社長は「(第5世代通信〈5G〉を地域限定で利用できる)ローカル5G、Wi―Fi(ワイファイ)、省電力広域無線通信(LPWA)など、IoT向けの無線は得意分野だ」とし、企業との協業を通じて個人や法人向けに付加価値の高い商材を提供するBツーBツーX事業に力を注ぐ方針を示す。
もっとも、NTT東西は回線事業の成長鈍化を見据え、農業やエネルギーといった回線収入以外の「非回線事業」の売上高の拡大に取り組んできた。自社の中長期的な成長に向けては、いかに事業構造の転換を加速できるかも問われる。