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大口顧客との交渉見直し本格化、鉄鋼大手の収益力は向上するか

2022年の鋼材需要は、半導体不足などによる自動車減産の長期化が響き低調だった。国内の粗鋼生産量は10月時点で前年割れが10カ月続いている。こうした中で鉄鋼大手は4月以降、大口顧客向けの「ひも付き価格」交渉の見直しを本格化。鋼材の価格水準などを是正し、収益力の向上に取り組んでいる。

ひも付きは、自動車や電機などが対象の大量・長期的な取引。店売りの市況価格と違って、需給の変動と直接関係がないとの声もあるが、価格一般に与える影響は小さくない。

 

今年は急激な円安もあって原材料高騰に拍車がかかり、円滑な転嫁が交渉の焦点。生産コストに加え、品質、安定供給など製品の価値を示すのが本来のひも付き価格だ。各社は余剰生産能力やムダを削り、粘り強く顧客と向き合っている。

 

この結果、22年4―9月期の鋼材トン当たり平均価格は、日本製鉄が14万6000円、JFEスチールが13万1600円、神戸製鋼所が13万4500円と、いずれも前年同期から約4割高まった。

日鉄は23年3月期で前期比29%増の15万2000円を見込む。注目されたのがトヨタ自動車と合意した22年度下期の自動車用支給材価格。同上期からトン当たり4万円程度と、11年3月期からは過去最大の上げ幅となった。

背景には日鉄によるひも付き交渉の見直しがある。中身は価格だけでなく、生産・出荷前の価格決定、交渉の短期間化というタイミング面にも及ぶ。価格水準は21年度上期で「世界の市況に比べ陥没している。今後、理不尽な価格は受けられない」(橋本英二社長)との認識が契機だった。

長く安定していた原料価格は大きく変動し、生産コストに占める変動費が7割を超し価格の柔軟な修正が必要となった。海外市況価格が下落する一方、ひも付き価格は改善し11月半ば時点で日鉄は「陥没していた水準からは回復した」(森高弘副社長)と言う。ただ見直しの進展は顧客により濃淡があり、今後の推移を注視したい。

日刊工業新聞 2022年12月09日

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