国内メーカー初開発、「FCフォーク用水素充填装置向け水素ガスブースター」の実力値
【神戸】エスアールエンジニアリング(神戸市中央区、橋本匡彦社長)は、燃料電池(FC)フォークリフトの水素充填装置向けの油圧駆動式水素ガスブースターを国内メーカーとして初めて開発した。1時間当たりの水素吐出量を4ノルマル立方メートルに抑えることで、既存の海外製品に比べて小型化を実現。高圧ガス保安法の許可規制の対象外となるため、顧客にとって導入ハードルも低い。2023年中にも国産初の同製品納入を目指す。
吐出ガス圧力は45メガパスカル。主力製品の油圧機器の技術などを生かし開発した。パッキン技術の大野社(神戸市北区)、表面処理技術の神港精機(同西区)、高機能金属材料販売のアークハリマ(兵庫県姫路市)などと連携し、水素環境下での性能を確保した。22年2月に日本製鉄グループの研究試験施設で1000時間の耐久試験を実施し、安全性が認められた。
国内のFCフォークリフトの活用現場では現在、水素充填装置に米国製の水素ガスブースターが採用されている。ただ、これらは吐出量40―100ノルマル立方メートル程度の大型品で、FCフォークリフトの運用としてはオーバースペックとなることが多い。エスアールエンジニアリングは小型品を投入し、設備全体の最適化を提案する。
1時間当たりの吐出量が4ノルマル立方メートルだと、1日当たりの吐出量は100ノルマル立方メートル未満となる。1日当たり100ノルマル立方メートル未満であれば、高圧ガス保安法上の第一種製造者に該当せず、設備導入時の自治体の許可が不要。その分、顧客の導入ハードルを下げられる。
現在、1時間当たり吐出量5ノルマル立方メートルのタイプも開発中。同タイプは水電解式水素発生装置を組み込む施設に適している。現場ニーズに合わせ提案の幅を広げる。
エスアールエンジニアリングは大野社、神港精機、アークハリマなどとともに神戸市機械金属工業会の企業で構成する「神戸水素クラスター」の会員。神戸市は神戸港でのカーボンニュートラルポート形成を目指しており、大規模水素ステーション計画など水素関連設備の投資の期待が高まっている。技術力をアピールし関連設備への納入につなげる考え。