三菱ケミカルGが開発、再生炭素繊維用いた不織布複合材に吹く追い風
多方向の衝撃・荷重に強み
三菱ケミカルグループはリサイクル炭素繊維製の不織布と熱可塑性樹脂の複合材料を開発した。従来の短く切断したリサイクル炭素繊維を樹脂に配合した材料に比べ多方向からの衝撃や荷重に強い。同社は炭素繊維の普及に向けて多様な複合材料を展開している。新たな複合材でリサイクル炭素繊維も含め用途拡大を図る。
炭素繊維のリサイクル工程は、航空機や自動車の使用済みの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や端材を熱して樹脂を気化させ、炭素繊維を取り出す。従来はリサイクル炭素繊維を切断して樹脂を高配合し、射出成形用材料として販売している。新材料は、同繊維のみを使って空隙の均一な不織布に加工し、樹脂を流し入れて中間材を生産。顧客はこれを加熱プレスし、自動車などの部品に加工する。
炭素繊維は金属代替の軽量化部材として期待される一方、脱炭素ニーズの中で製造時のエネルギー消費量の大きさが課題とされる。三菱ケミカルグループは環境負荷の低いリサイクル材も提供することで、炭素繊維の普及を目指す。日独でリサイクル体制を整えている。リサイクル炭素繊維は新品の炭素繊維に比べライフサイクル全体の二酸化炭素(CO2)排出量はおよそ6分の1という。
世界的な電気自動車(EV)シフトは軽量化に寄与する複合材には追い風だ。同社は大型部品向けに炭素繊維と熱硬化樹脂の複合材や、複合材と金属のマルチマテリアル材、小―中型部品向けに熱可塑性樹脂と短い炭素繊維を混合した射出成形材料を提供している。またEVのバッテリーケースには、遮炎機能を持つガラス繊維と熱可塑性樹脂の複合材料を提案し、顧客との評価試験を進めている。
日刊工業新聞 2022年11月28日