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過去の海洋炭素貯蔵量、海洋機構が海底堆積物から推定に成功

過去の海洋炭素貯蔵量、海洋機構が海底堆積物から推定に成功

海底堆積物を採取した海洋地球研究船「みらい」(海洋研究開発機構提供)

海洋研究開発機構の岩崎晋弥JSPS外来研究員(研究当時)らは、海底堆積物から過去の海洋の炭素貯蔵量を推定することに成功した。約1万9000―1万5000年前の最終退氷期初期に南極海を取り巻くチリ沖の深層水が二酸化炭素(CO2)を大量放出していたことを明らかにした。有孔虫殻の溶解度から過去の深層水炭酸イオン濃度を求めた。この手法の応用により、海洋が持つ炭素貯蔵能力の解明や気候予測の高度化が期待される。

南大洋チリ沖水深1500―4000メートルで採取した海底堆積物試料を微小物体の表面から内部の形態情報を3次元で得られるマイクロフォーカスX線CT装置で分析した。

CO2が海水に溶け込むほど海水は酸性に傾き、有孔虫や貝類の炭酸カルシウムの殻は溶解しやすくなる。これを利用し、時系列で求めた有孔虫殻溶解度から深層水炭酸イオン濃度を復元した。

その結果、最終退氷期初期において、深層水の炭酸イオン濃度が1キログラム当たり約20マイクロモル(マイクロは100万分の1)上昇し、炭素貯蔵量が減少したことが分かった。

南極周極深層水で一様に同濃度上昇したとすると、放出される炭素量は9・4ギガトン(ギガは10億)以上となる。これは最終退氷期初期に大気中に放出されたCO2の約15%に相当し、南太平洋深層水に貯蔵されていた炭素の放出が地球規模の気候変動に寄与したことを示す。

さらに、炭素貯蔵量の低い深層水が太平洋から大西洋へ流出することで、南大洋全体の海洋炭素貯蔵量が低下したことが分かった。

日刊工業新聞 2022年11月17日

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