変換効率1.5倍、東北大が「無電極プラズマ推進機」の性能向上に成功した
東北大学の高橋和貴准教授らは、宇宙機の推力に応用でき、大電力・長寿命化が見込める「無電極プラズマ推進機」の性能を向上することに成功した。プラズマが発生する部分に特殊な磁場構造を印加することで、壁面へのエネルギー損失を抑えた。それにより、高周波電力から推進エネルギーへの変換効率が従来の1・5倍となる約30%に向上できた。惑星探査機などに使われているイオンエンジンに続く次世代推進機の実現につながる。
成果は10日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。
これまでに、プラズマ発生部分ではプラズマが壁面に触れることでエネルギー損失や粒子損失を引き起こしていることを見いだしてきた。今回、特殊な磁場構造「カスプ」をプラズマ発生部に形成した状態で推力を評価。カスプを適用して磁力線の形状を変えるとプラズマ発生部分の壁面の粒子損失が減少し、推力が従来では60ミリニュートンだったのが約80ミリニュートンまで増大することが分かった。カスプを適用した場合の燃料の質量流量や高周波電力、推力計測結果から推進効率を見積もると約30%となり、従来の1・5倍となることを見いだした。
さまざまな宇宙機が開発される中で、無電極プラズマ推進機は次世代の大電力宇宙推進機として期待されている。だが推進効率が現段階で低く、物理的な課題があることが知られている。
日刊工業新聞 2022年11月11日