「核融合発電」の研究開発を促進、政府が司令塔機能を強化
政府は核融合発電の研究開発を促進する司令塔機能を強化する。「統合イノベーション戦略推進会議」の下に官民の有識者会議を設置する。民間投資を促し、核融合発電の商用化を後押しする施策を検討。米国や英国などで政府主導の取り組みが進む中、日本の方向性を打ち出す。
座長は経団連の篠原弘道副会長(NTT相談役)が務める。産業界や学術界から専門家が参加する。月内に初会合を開き、論点を整理。11月の2回目に核融合技術の開発戦略や実証時期などを含めて中間整理する。2023年1月以降に戦略案を取りまとめ、4月の統合イノベーション戦略推進会議で決定する。
核融合発電は太陽のエネルギー運動を再現したシステム。重水素と三重水素をプラズマ状態でぶつけ、生じた熱で発電する。二酸化炭素(CO2)を排出せず発電できることから次世代エネルギーと期待される。
技術実証では日本など世界7極が参加する国際熱核融合実験炉(イーター)がフランスで建設中だ。25年にも運転を開始し、35年に燃料を燃焼する実験を行う計画。世界ではイーターの稼働以降の商用化を見据えた動きが加速する。英国は40年代に発電炉の建設を計画。米国も商業核融合を加速するため、民間企業と連携する戦略を策定することを宣言している。
スタートアップを中心に民間投資も広がる。日本では部品供給に特化する京都フュージョニアリング(東京都千代田区)などが事業を展開する。従来、核融合はイーターを中心にした「国際協力」が中心だったが、技術の優位性を競う「国際競争」の時代に突入してきている。
日刊工業新聞2022年9月13日