AIロボットで産廃選別を自動化。シタラ興産社長が描く成長戦略
処理能力高め人件費削減
シタラ興産(埼玉県深谷市、設楽竜也社長)は、人工知能(AI)ロボットを活用し混合廃棄物の選別作業を自動化している。処理能力向上や人件費削減だけでなく「産業廃棄物業界のイメージを変え、当社の認知度を高める」(設楽社長)ための切り札にもなった。成功事例を足がかりにサーマルリサイクル発電など次の成長戦略を描く。(川越支局長・村上毅)
シタラ興産のサンライズFUKAYA工場(深谷市)。ここにフィンランド・ゼンロボティクス製AIロボットがある。選別作業を自動化することで「作業に通常10人充てるところを1人で済んだ」(設楽社長)という。
同ロボットは国内初導入。2016年11月の稼働から3年間はトラブルが続き、AIで認識するのにも課題があった。「それまで設備に何かあれば外部にお願いしていた。だが、設備が止まったら早期に復旧できるよう自社に専門のチームを設けた」(同)。チームで課題に対応するとともに、過酷な環境下でも耐久性を高めるためメーカー本社に掛け合うなどして安定稼働につなげていった。
「ただロボットに行き着いただけ」と設楽社長は語る。同工場は16年5月に開所した。新工場に当たり「何か驚きを与えられないか」(同)。その答えがロボットだった。工場をつくり稼働させるだけでなく、産業廃棄物業界のイメージを変える工場。海外の大型施設の選別ラインを見て導入を決断し、開所したばかりの工場を改装してまでロボット導入にこだわった。
実際に効果はてきめんだった。売上高はロボット導入前の2倍以上となる一方で、人件費は1割以上減少した。為貝正博経営企画部部長は「サンライズFUKAYA工場の成功が次に続いている。ロボット導入がなければ、売上高や事業規模など、ここまで伸びなかったのではないか」と指摘する。
当初、業界内でもロボット導入に懐疑的な見方もあった。だが、波及効果は大きかった。現在までに約2万人が見学に来所し、業界でロボット導入が進むきっかけにもなった。
設楽社長は「当社を自社の中だけで成長させるには限界がある」と力説する。ロボット導入の成功で同社の認知度を高め、他社・他業界から人材を呼び込み、協業先企業を増やす。積極的な採用で従業員数は16年当時と比べ約3倍の100人超に増加。事業の成長とともに金融機関との取引も拡大した。
ロボット導入をステップに次の成長の柱に位置付けるのがサーマルリサイクル施設「レガリア」だ。日量230トンの廃棄物を焼却処理し、処理した熱を発電に有効活用する。26年春竣工を予定している。設楽社長がロボット導入後から思い描いていた展開で当時、埼玉りそな銀行の池田一義社長(現シニアアドバイザー)から「応援する」と声をかけてもらったことも夢を後押しした。設楽社長は「先端技術を使って業界を変える。その先見性は今後も崩したくない。多くのニーズに応えたい」と力を込める。
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