電子1個の精度で電位分布撮影する、九大・日立が電顕新技術
九州大学の麻生亮太郎准教授と村上恭和教授、日立製作所の谷垣俊明主任研究員らは、電子1個の精度で電位分布を撮影する電子顕微鏡技術を開発した。白金触媒粒子を観察し電子数個分の分布を可視化できた。触媒の反応性や多孔質物質への分子吸着過程などを解析できるようになる。
電子波の干渉を利用する電子線ホログラフィー技術を高度化した。白金粒子の周囲の電位分布によって、周囲を通過する電子線の位相が変化する。電子線の位相像を求め、ノイズと微弱信号を分離することで元の電位分布を求める。
ノイズ分離のためにウェーブレット隠れマルコフモデルという画像ノイズ除去技術を開発した。
画素データに含まれる信号特徴を引き継いで変換するウェーブレット変換を適用し、変換パラメーターの最適化を通してノイズと信号を分離する。
空間分解能は0・16ナノメートル(ナノは10億分の1)。実験では白金粒子と酸化チタンの接合界面によって、白金粒子の帯電が電子6個分の負電荷や、電子2個分の正電荷に変化する様子を撮影できた。白金粒子の結晶の歪みにも影響されていた。
電位分布から触媒への分子供給やゼオライトへの分子吸着などを理解できる。成果は米科学誌サイエンスに掲載された。
日刊工業新聞2022年10月14日