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釣り銭機生産の革新をけん引するロボットたちの実力

釣り銭機生産の革新をけん引するロボットたちの実力

埼玉工場でユニットの組み立てをするネクステージ

グローリーの埼玉工場(埼玉県加須市)は1990年の操業開始時から産業用ロボットを導入しており、自動化に特化した工場として自社の生産革新をけん引している。双腕型協働ロボット14台をはじめ、産業用ロボットや無人搬送車(AGV)などが活躍。協働ロボットは2010年頃に1号機を導入し、その後、同ロボットを使ったラインの構築にも乗り出すなど生産性向上にまい進している。(姫路・岩崎左恵)

埼玉工場は国内向けのレジ釣り銭機など流通向け製品を製造しており、カワダロボティクス(東京都台東区)製の協働ロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」を中心に多数のロボットが稼働している。ネクステージは双腕のため部品を片手で持ち、もう一方の腕で作業が可能。また、カメラがロボットと一体化しており位置を常時把握できるため、周辺設備や部品置き場の位置精度を高める必要がなく周辺設備の簡素化につながる。

ネクステージはレジ釣り銭機を構成する二つのユニットの組み立てや、紙幣を収納する紙幣カセット部の検査などを担っている。ユニットの組み立てではネクステージの下部にAGVを設置。組み付ける部品ごとに移動を繰り返しつつハンドも自身で変えながら組み立て、人も近くで作業している。

紙幣カセット部は約9割以上が自動で組まれており、組み立ての段取りや検査をネクステージが担当。その他の工程でもアーム型の協働ロボットなどが稼働し、製品の検査工程に使用されている。

協働ロボットを本格稼働した11年当時、釣り銭機の生産能力は日産約70台(年間約2万台)で生産ラインの人員は106人だったが、22年には同約130台(同約4万台)で人員は157人になった。生産台数は約2倍になったものの、人員は2倍に増えておらず、省人化が進んでいることがうかがえる。

製品検査をするアーム型の協働ロボット

井筒誠埼玉工場長は「(レジでの)決済手段が多様化し、半セルフ決済に対応した釣り銭機の需要が増加している。このため生産能力を日産180台に引き上げる」とさらなる増産を示唆する。

課題もある。協働ロボットは動作が遅く、生産能力を高めるには「24時間稼働しなければならない」(井筒工場長)という。このため日中に加え、夜間も稼働できるようシステムを改修する考え。例えば「日中は人と協働で検査をし、夜間は組み立てを担えるよう、1台のロボットで2役できるようにしたい」(同)と構想を語る。

埼玉工場では10年近く稼働する協働ロボットもあり、老朽化で停止回数が増える懸念もある。このため、最新設備への置き換えを進める方針で、協働ロボットをはじめ、AGVや自律移動ロボット(AMR)などの追加導入を種類や台数にこだわらず検討。ロボットに合わせて製品の作り方も変更する構え。生産ラインの新陳代謝を繰り返しながら、生産性の一層の向上をロボットとともに目指していく。


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日刊工業新聞 2022年8月16日

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