建機メーカーが中国依存の怖さを学んだ二つのショック経験
12・7%と0・7%―。これは日本建設機械工業会(建機工)がまとめている、建機の仕向け先別出荷金額の中国の構成比だ。12・7%は2010年度の数字で、0・7%は21年度の比率。直近の22年4―6月期は中国の構成比が0・6%とさらに低下した。中国では足元の建機需要も低迷。現地に進出する日系建機メーカーにとって生産能力の余剰解消が喫緊の課題となっている。(編集委員・嶋田歩)
10年は、世界市場がリーマン・ショックに見舞われた08年の2年後にあたる。日米欧など資本主義経済の国々が萎縮する中で、中国は4兆元(当時の為替レートで約60兆円)の公共投資を敢行。鉄鋼やセメントとともに建機需要も拡大した。
コマツや日立建機、コベルコ建機、住友建機など日系建機大手も相次いで中国の工場建設あるいは拡大に走り、生産力を増強。中国建機市場は一時期、世界建機需要の半分を占めると言われた。
ただ、中国の建機市場は11年ごろを境に急失速。需要の落ち込みとともに同国内には使われていない建機があふれ、供給力が需要を上回る過剰生産の状態が続いた。日立建機は安徽省の合肥第二工場の売却を16年に決断。同工場は11年の完成以来、休業状態が続いていた。
中国市場に対して建機業界にはもう一つ、苦い経験がある。20年度に発生した「2年分の特需」がそれだ。武漢市で発生した新型コロナウイルスが海外に飛び火、世界各国の市況が急落した時も中国はロックダウン(都市封鎖)政策でいち早く立ち直り、建機注文が伸びた。コロナ騒動のため本来は19年度中に見込んでいた春節商戦が20年4月以降にずれ込み、20年度は実質的に春節が2回あったような状況で建機需要がかさ上げされた。21年度以降はこの反動減に加え、中国で余剰になった建機がアジア市場に流れ込み、低価格競争を引き起こしている。
2度のショック経験を通じて日本メーカーは中国市場に依存することの怖さと、もろさを学んだ。各社とも現在は中国比率の引き下げに腐心している。22年度の売上高でコマツの中国比率は3%。日立建機も3%の予想だ。中国市場がこの先さらに落ち込んでも北米や中南米、アジアの伸びがあれば十二分にカバーできる。
中国の工場閉鎖ではコベルコ建機も23年1月ごろに浙江省杭州の工場を閉鎖し、四川省成都の1工場に集約することを決めた。油圧ショベルの生産能力は年1万500台から同5500台とほぼ半減する。代わってインド工場の製缶品供給能力を強化する。
住友建機は河北省唐山の工場のショベル減産の影響を抑えるため、同工場で製缶品生産を拡大。コマツはインドネシアに続いて、中国工場からブラジルへの輸出を試みる。
市場の魅力が薄れる一方で、生産余剰の状態は残る。これをどう活用するかに各社は知恵を絞っている。
【関連記事】 建機メーカーが大注目する異色のレンタル会社