床の振動対策を最適化、大成建設が開発したスゴいAI新手法
大成建設は建物の床振動対策として、床下に設ける制震装置(TMD)を最適化する提案に乗り出す。人工知能(AI)を活用し、バネやダンパーの効果的な仕様・配置を個別に設計する仕組みを確立。実際の建物で検証し、従来比6割の台数で同等の制震効果を引き出せることを確認した。今後、テナント変更などを控えた改修物件のほか、床振動の発生が懸念される新築物件にも展開する。
大成建設は建物オーナーに対し、独自の設計システム「T―Optimus TMD」として訴求する。膨大なパラメーターの組み合わせを基に、優れたものを求める反復計算で効率的に最適解を出す「進化計算」の手法を採用。TMDの同調振動数と減衰比、配置を個別に設計することで高い制震効果を備えた仕様や配置を導き出し、TMDメーカーと調整して仕上げる。
鉄骨造2階建ての建物で、人の歩行で生じる振動の制震効果を検証。同調振動数と減衰比を同一に設計した従来手法の10台に対し、同システムで設計した個別仕様の2組6台が同等の制震効果を発揮することを確認した。1台40万―50万円と高額なTMD本体の導入コストに加えて、規模や立地など条件によっては施工費や輸送費も低減できる可能性があるという。
鉄骨造の建物で生じる床振動への対策としては、OAフロアと構造床の間に設置した複数のTMDで振動を吸収する手法が一般的とされる。ただ設置する床に応じて設計する同一仕様のTMDを用いるため、制震効果が低減する課題があった。また、広さ200―300平方メートルのフロアの場合は10―20台が必要になるため、対応を先送りする例が少なくなかった。
日刊工業新聞2022年9月27日