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巨大地震の揺れ受け流す、THKが手掛ける免振装置の実力

巨大地震の揺れ受け流す、THKが手掛ける免振装置の実力

THKの本社地下にあるボールネジを応用した「粘性減衰装置RDT」

THKは東京都港区の本社を、免震機能を持つ超大型直動機器で支える。本社重量約1万3000トンの半分を同社が生産・販売する直動機器の一種である「超大型LMガイド」で受ける。巨大地震が起きても同直動機器で揺れを受け流すことができる。建物や建物内の人命、財産を守る。

同社は工作機械などの高精度位置決めを実現する直動製品「LMガイド」や同「ボールネジ」で世界有数のシェアを持つ。この直動機器技術を応用したのが「直動転がり支承CLB」などの免震装置。地震対策には揺れを吸収する「制震」、揺れに耐える「耐震」もあるが、同社は地面と建物を切り離し、揺れを受け流す「免震」の装置を手がける。

免震製品の一つであるCLBは十字や井げたのように組むことで縦横斜めのあらゆる方向の揺れを受け流す。建物の荷重を支えながら、地震の際には摩擦係数1000分の5という摩擦力で動く。

もうひとつの免震装置はボールネジを応用した「粘性減衰装置RDT」。エネルギーを吸収する役目を担う。工作機械のボールネジはモーターをつけて軸回転でナットが移動するが免震では縦横斜めの揺れをナットが回転することで吸収。回転エネルギーはボールネジの外筒と内筒に封入したシリコンオイルが粘性抵抗で減衰する。

同社はCLBやRDTのほか、揺れた建物を元の位置に戻す積層ゴムを組み合わせ強固な地震対策を築く。産業機器統括本部ACE事業部の小竹祐治事業部長は「免震装置を組み合わせ、地震の周期を変える」と話す。

THKでは建物免震装置のCLBやRDTだけでなく、床などの部分免震を実現するLMガイドと回転ダンパー、バネを組み合わせた装置「TGS」も展開。サーバーや精密機器、美術品を載せる場所の免震を実現する。

東京直下や南海トラフ地震など巨大地震はいつ起きてもおかしくない。免震対策はコストとみられるが多いが、THKは自社製品で万全の体制を整える。(川口拓洋)

日刊工業新聞2021年4月22日

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