コロナ禍で飲食業の訴訟急増の背景事情
新型コロナウイルス感染拡大を受けて飲食業の訴訟が急増している。東京商工リサーチ(TSR)の集計によると、東京地方裁判所で飲食業者が提訴された訴訟件数が2020年はコロナ禍前の前年と比べて約2倍の159件だった。21年も118件で新型コロナの影響が長引いている。訴訟内容の最多は家賃滞納などによる「建物明け渡し・賃料」請求で、20年は前年比2・6倍の89件に達した。
今回の調査はTSRが独自収集する全国の裁判情報のうち、19―21年に東京地裁であった飲食業者への訴訟件数を対象に分析した。
業態別では「食堂・レストラン」が最も多く、構成比は19年が59・7%、20年が61・6%、21年が56・7%と全体の半数以上を占めた。
一方、「酒場・ビアホール」がコロナ禍で急増した。19年は9件(構成比10・9%)にとどまったが、20年は29件(同18・2%)、21年も23件(同19・4%)となり、コロナ禍前から約2倍に増えた。
消費者の行動自粛で夜間の繁華街で人出が途絶えたり、店舗が時短営業に移行したりして売り上げが減少したことが響いた。居酒屋を中心にテナント賃料を支払えない状況に追い込まれた。「中華料理、ラーメン店」もコロナ禍以降に建物明け渡しや売掛金の請求が増えた。
ただ「喫茶店」や「そば・うどん店」はコロナ禍でも落ち着いて推移している。人数などの来店形式や店舗投資の違いも要因の一つとみられる。
日刊工業新聞2022年9月13日