カフェ運営のプロントが子どもと環境活動をするワケ
国連の持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みとして、子どもとの環境活動を検討する企業が増えている。すでに自社の製品や技術を教材として出前講座を開いている企業も少なくない。子どもの支援は企業にも恩恵がある。飲食チェーンを展開するプロントコーポレーション(東京都港区、竹村典彦社長)は「こどもエコクラブ」と連携した森林整備活動が従業員教育につながっている。
こどもエコクラブは自然体験を通じて環境問題解決に自ら行動する人材育成を目的とした組織。全国に1700クラブあり、8万7000人が参加している。
プロントとエコクラブは各地で活動しており、17年11月には大分県内の二つのクラブから32人、プロントから店舗従業員など10人が参加し、地震で崩れた山に植樹した。19年11月には千葉県内のクラブとプロント従業員が、大型台風の強風で折れた枝や葉を片付けた。ほかにも大阪府の山で下草刈りなどの活動をしている。
プロントは都市部でカフェやバーを運営しており、すぐに「子ども」や「森」と結びつきにくい。きっかけは09年に環境管理システム「ISO14001」の認証を取得したことにある。
認証業務を担当した森谷晋一SDGs推進担当部長は、店舗の従業員にも気候変動問題を“自分ごと化”してほしいと思った。他社では現場の意識が高まらず、認証が形骸化する例が少なくない。
プロントは従業員も一体となった環境活動にしようと10年、森林保全に取り組む国土緑化推進機構への寄付を始めた。産地や製法にこだわったメニュー「P LOVE GREEN」の売上高の一部を原資とする。店舗は同メニューの販売で森林保全を支援できる。
その流れで16年に、こどもエコクラブと協定を結んだ。「森林保全が大人になった子どもを気候変動の被害から守る」(森谷部長)のが理由だ。エコクラブにも寄付し、店長やアルバイト店員が参加した森林整備を始めた。植えて育てるだけでなく、間伐材でおもちゃも製作する。
「体験が一番理解できる。子どもたちと活動した従業員は次はいつ開催するのか聞いてくる。感謝されるとうれしいようだ。一人一人の人間力が上がった」(森谷部長)と思わぬ成果を語る。外食産業は人で成り立っており、人材教育は大切。森林保全活動は人材教育にも通じる。
こどもエコクラブ事務局の日本環境協会の東尚子課長も「従業員の環境意識が向上する。自社のSDGsの取り組みを再認識する機会にもなる」と企業側のメリットを説明する。子ども向け活動を企画する企業には「SDGsや環境活動を子どもたちに発信してほしい。子ども向きの教材や講座、プログラムならどれでもOK。子どもたちが『すごい!』と思ったことは必ず社会にも波及する」(東課長)と呼びかける。
SDGs活動として子どもとの活動や学習を検討する企業、すでに出前講座を実施する企業も自社へのメリットを整理すると取り組みを推進しやすい。