「ベクトルを一つにまとめる」、双日社長が大切にしていること

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「経営陣の思いを従業員にしっかりと伝え、ベクトルを一つにまとめ上げる」。この姿勢の原点には、2008年に双日の藤本昌義社長が、ベネズエラの自動車生産子会社に社長として出向した時の経験がある。

同社には1400―1500人の従業員が働いていたが、経営者と労働者のコミュニケーションがとれておらず、労働争議で生産がストップするほか、従業員の無断欠勤率は10%を超えていた。

藤本社長が思い出したのは、日商岩井(現双日)の経営企画部で資金繰りに奔走するなど経営再建に取り組んでいた時のことだ。「毎日、4、5時まで働いていた」。「会社を救う」という思いは一つだった。そして04年に日商岩井とニチメンは合併し、双日が誕生する。

今度は藤本社長がトップとして自らの手でベクトルを一つにする番だった。そのために打ったのは「家族ぐるみで会社にかかわってもらう」という極めて日本的な手だ。従業員の子どもの夏休みには会社見学会を開き、絵を描いてもらい、それを年末にはカレンダーにした。妻や子どもを対象にコンピューター教室も開いた。

無断欠勤対策としては欠勤3日目には人事担当者が家庭訪問した。その結果、欠勤率は激減し、現地自動車会社の社長会でも驚かれた。従業員を一つにまとめ上げた藤本社長は現地経済誌の10人の経営者の一人に日本人として初めて選ばれた。

96年にはトヨタ自動車のポーランドの現地法人に副社長として出向した経験もある。社長だった森永善彦氏は、本社を説得し、現地の実情に即した販売方法を貫いた。藤本氏との二人三脚で、販売台数を従来比5倍の年間1万5000台に伸ばした。「トップはぶれてはいけない」ことを学ぶ。

大手商社7社の22年3月期連結業績(国際会計基準)は、資源価格高騰などが追い風となり、全社が当期利益で過去最高を更新したが、23年3月期では双日のみが過去最高を予想する。持続的な成長への道筋が確かなものになりつつある。

同社の従業員数は単体で2558人(22年3月末時点)、7本部制で、「決断がスピーディーなのが強みだ」。部門を越えた人事異動も行われており、人材交流も活発だ。つまり「縦と横のマトリックスができており、この風通しのよさは失わないようにしたい」。ロシアのウクライナへの侵攻など経営環境が大きく変わる中、「現状を分析し、一手先の手を打つ」ことも必要な局面だ。(編集委員・中沖泰雄)

【略歴】ふじもと・まさよし 81年(昭56)東大法卒、同年日商岩井(現双日)入社。05年自動車第三部長、14年理事、15年執行役員、同年常務執行役員、16年専務執行役員、17年社長。福岡県出身、64歳。

日刊工業新聞 2022年7月5日

キーワード
双日 経営哲学

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