私たちのよく知るコンピュータと量子コンピュータとの違いは?
古典と量子のチューリングマシン
1936年にイギリスの数学者アラン・チューリングが、計算を行う自動機械(オートマトン)の数学的なモデルを考案しました。最も単純化されたコンピュータの抽象的なモデルであり、「チューリングマシン(TM)」とよばれています。これは、本体、1本の紙テープ、読み書きヘッドの3つから構成されています。本体は複数の内部状態をとることができ、ヘッドを介して、テープから情報を読み取り、テープへ情報を書き込むことができます。テープは無限個のマス目に区切られており、各マス目にはテープ記号とよばれるあらかじめ決められた有限種類の記号情報のひとつが書きこまれます。またテープは1マスずつ前後に動かすことができます。
テープに計算用のデータのみならず、計算処理手順(プログラム)も記載して、テープを入れ替えることでいろいろな処理が可能となります。これは「万能チューリングマシン」と呼ばれ、これを具現化したコンピュータが現在の「ノイマン型コンピュータ」です。演算装置と制御装置、主記憶装置(メモリ)、入出力装置から構成されています。
実行されるプログラムがメモリ内部にデータとして格納されているプログラム内蔵方式であり、現在のほとんどがこのノイマン型です。万能チューリングマシンを作動できるプログラム言語は、「チューリング完全」と呼ばれています。
一方、チューリングマシンに量子力学の重ね合わせ原理(1と0が同時に存在する状態)を取り入れたのが「量子チューリングマシン(QTM)」です(上図)。基本的な構成は同じですが、通常のTMとの大きな違いは、QTMでは制御本体の単一プロセッサ上で任意の並列度の並列計算が行えるという点です。CPUに対して、QPU(量子処理ユニット)が並列計算を行うことになります。
要点BOX
●チューリングマシンは本体、テープ、ヘッド
●通常のパソコンはノイマン型コンピュータ
●量子制御本体(QPU)での並列計算
(「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい量子コンピュータの本」p.28-29より抜粋)
<書籍紹介>
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい量子コンピュータの本
著者名:山﨑耕造
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円
<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア
<目次>
第1章 量子コンピュータはどれだけ凄いのか?
第2章 量子コンピュータとは?
第3章 量子の原理をどう使うの?
第4章 量子コンピュータの種類は?
第5章 量子ビットと量子ゲートとは?
第6章 量子回路と量子アルゴリズムとは?
第7章 量子ビットのハードウェアと量子暗号のしくみは?
第8章 量子コンピュータ開発の世界の現状は?
【ウェビナー開催のお知らせ】
『量子技術の圧倒的な進化がもたらす未来。ビジネスパーソンが今できることとは?』
2022/9/9(金) 14:00 ~ 15:30 オンライン配信
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【アーカイブ配信】
本セミナーの参加申込者は、ウェビナー終了後、アーカイブ配信をご覧いただけます。
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アーカイブ配信の視聴方法は、9月9日(金)16:00頃、メールにてご案内いたします。
講演者紹介
寺部 雅能(てらべ まさよし)氏
住友商事 Quantum Transformation (QX) プロジェクト Technology Director
東北大学大学院 情報科学研究科 特任准教授(客員)
社会とテクノロジーの交差点に立ち、新たな価値の創出に挑戦し続ける元エンジニア・研究者の商社マン。
量子コンピューティングの社会実装分野で数多くの世界初実証、知財創出、論文出版、海外スタートアップ出資や国際会議での基調講演、招待講演等の実績を持つ。著書「量子コンピュータが変える未来」他。