東北大の川島教授ら開発、「脳トレゲーム」の認知機能改善効果

認知症対策に有効 「遊び」が医学・医療に

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現在、子どもから高齢者まで電子機器を使った“ゲーム”を楽しむ人が増えている。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授らは、脳の活動をリアルタイムでフィードバックしながら記憶力や思考力を鍛えられる脳のトレーニング(脳トレ)ゲームを開発した。脳活動の高低によりゲームの背景の色が変わり、脳活動が高い状態を自身で維持したまま脳を活性化できる。高齢者などの認知症の予防や改善に役立つと期待される。(飯田真美子)

東北大の川島教授は脳科学者として認知症の予防や改善、幼少時の脳の発達に関する研究を進めてきた。その中で毎日少しずつ読み書きや計算を反復する「学習療法」に着目しており、その成果の一つとして脳トレゲームを開発してきた。商品化されたゲームも多く日本だけで約400万本を売り上げ、脳トレゲームを世に広めた先駆者と言える。近年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で家で過ごす時間が増え、ゲームをする人が増加した。年齢によらず家族で楽しめるゲームが注目される中で、脳トレゲームの需要は今後も高まると予想される。

研究グループは脳トレ中の脳活動を自身でモニタリングしながら常に脳活動が高い状態でゲームを実施することで、認知機能の向上などの効果を高められると仮説。脳トレ中の脳活動をリアルタイムで計測し、脳活動に応じてゲーム画面の背景色が変わる「ニューロフィードバック脳トレ(NF脳トレ)」を開発した。脳活動を計測する二つのセンサーが搭載された装置を頭部に装着し、タブレット端末と連動させることで、NF脳トレをプレイすると脳活動の高低によって背景の色が青や赤などに瞬時に変わる仕組みだ。研究グループはNF脳トレの効果を検証した。

脳トレゲームを実施すると若年者の認知機能が向上しやすいことから、同検証では平均年齢21歳の男女30人ずつを対象とした。脳活動を高め続けて脳トレゲームをする「NF脳トレ群」と一般的な脳トレゲームをプレイする「脳トレ群」、その他のゲームを実施する「対照群」の3グループに無作為に分け、4週間で毎日20分ずつ同じゲームをプレイした後に認知機能検査を実施した。

同検査は試験者がゲームへの介入前後に実施しており、その差分を脳トレによる変化量として評価した。その結果、NF脳トレ群は脳トレ群と対照群に比べて注意力や作業の記憶力の正答率が約3倍、エピソードを記憶するテストの正答率が4倍近く高いことが分かった。この結果から、一般的な脳トレや対照群よりも研究グループが開発したNF脳トレの方が認知機能の改善効果が高いことが明らかになった。NF脳トレは自宅で簡単にいつでもプレイできることから、若年者への活用に限らず高齢者の認知機能の維持や向上につながると期待される。ゲームが子どもの「遊び」だけでなく、医学・医療分野に応用され新たなビジネスにつながるカギとなると見られる。

日刊工業新聞2022年6月6日

キーワード
認知症 東北大学

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