エアバッグ素材のPET化が加速している!東洋紡の基布、国産車に初採用
東洋紡のポリエチレンテレフタレート(PET)製エアバッグ基布が2022年度発売の国産車に初採用された。エアバッグ基布の大半を占めるナイロン66(PA66)は18年頃から需給が逼迫(ひっぱく)し、価格が高騰。そのためエアバッグ素材はPET化が加速している。(大阪・友広志保)
東洋紡のPET製基布が採用されたのは、横転時などに乗員を保護する「側突系」のエアバッグ。側突系は正面衝突から乗員を保護する「前突系」と比べエアバッグを膨らませるガス温度が低くてもよいことから、耐熱性で劣るPETへの置き換えが進んでいる。
PA66原料のアジポニトリルは約75%が米国で生産されている。車体軽量化を目的とした金属部品からPA66部品への置き換えなどで需要が拡大する中、21年に発生した米国の寒波でアジポニトリルの供給が停滞。PA66の価格は通常PETの3倍程度だが、原料高騰により一時は5倍程度まで跳ね上がった。
現在は半導体不足による自動車減産で需給がバランスしている状況とみられる。今後はアジポニトリルメーカーによる中国でのプラント新設計画もあり、原料を要因とするPA66の供給制約はほぼ解消するだろうと言われている。
一方、各国の安全規制強化により前突系に比べ布の使用量が多い側突系のカーテンエアバッグの搭載が拡大することや、PET樹脂は製造時のCO2(二酸化炭素)排出がPA66の半分程度で環境負担が小さいことなどからPETの利用は拡大すると見られている。現状グローバルで、エアバッグは糸量換算でPA66が70%、PETが30%だが、東洋紡は26年にPA66が40%、PETが60%と比率が逆転すると予想する。
東洋紡のエアバッグ原糸・基布事業は18年の原糸工場火災やPA66を含む原料価格の高騰で、収益が大幅に悪化。PETはPA66より市況の波がおだやかなこともあり、PET化の進展は同社エアバッグ事業の収益安定化にもつながる。
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