三菱重工が稼働へ、「水素パーク」の全容
三菱重工業は高砂製作所(兵庫県高砂市)に水素の製造、貯蔵、発電を一貫して実証する「水素パーク」を整備し、2023年に本格稼働する計画だ。水素製造では水電解を含む複数の技術を実証し、貯蔵した水素を大型・中小型ガスタービンに供給。水素や燃料アンモニアを利用するガスタービンの開発を進め、25年に水素専焼のガスタービン商用化を目指している。(いわき・駒橋徐)
三菱重工は火力発電のカーボンゼロ実現に向け水素と燃料アンモニアの混焼、それぞれ専焼するガスタービンを開発している。この3方式で技術の核となる水素焚きガスタービン燃焼器の実用化開発を進める。
本命のドライ式は予混合ノズルで燃料と空気を混合燃焼し、燃焼器内で高温スポットが発生しにくく窒素酸化物(NOx)発生を低減できる。燃焼温度1650度C級の大型ガスタービンによる30%の水素混焼はすでに実証を終え、商用化を見込む段階だ。
水素専焼ではマルチクラスター(DLN)タイプも開発する。250以上の微細孔から空気と水素を吹き出して混合・低NOxで燃焼する。機器内部で火炎が逆流する「フラッシュバック(逆火)」を防止する効果もあり、本年末に大型ガスタービンで実証に入る計画だ。
アンモニア焚きでは、中小型ガスタービンでアンモニア100%直接燃焼を25年に実用化する構え。NOxの発生を抑えるため2段燃焼器も開発する。
大型ガスタービンはアンモニア分解方式で30年以降に実用化を見込む。ガスタービンの排熱でアンモニアを水素、窒素分解する触媒の連続運転にめどを付けており、ガスタービン発電システムと一体で開発する。
開発の舞台となる水素パークは高砂製作所構内の実証設備複合サイクル発電所(第二T地点)に隣接して整備する。水素ガスタービン実機での発電を実証し、水素製造、貯蔵、発電まで行う大型水素エネルギー基地だ。水素の製造は高圧水素生産のアルカリ水電解装置や、固体酸化物燃料電池(SOFC)を逆利用する固体酸化物形電解セル(SOEC)、メタン熱分解方式などで行う。水素の貯蔵ボンベ(200気圧)をまず350本(水素3・5トン分)設置し、将来は増強する。
水素供給用の配管は、既存の天然ガス用架空配管に並んだ格好で1キロメートルを敷設する。水素の架空配管の本格導入は国内初の取り組みだ。第二T地点に配置する高効率の「JAC形ガスタービン」を用いたコンバインドサイクルの水素混焼発電や、工場内試験設備での4万キロワットガスタービン専焼も実証する計画。水素パークから高効率のカーボンフリー水素・燃料アンモニアガスタービンを世界へ発信していく。