ヤマト運輸がデジタル人材の新卒採用を倍増させる狙い
ヤマト運輸はデジタル人材の採用・育成に力を入れる。2023年4月入社の新卒デジタル人材を22年度の2倍となる最大10人程度採用する。すでに約300人のデジタル人材がいるが、中核となる人材は新卒で育てる。また、データサイエンティストなど一部の人材にジョブ型雇用を導入したほか、一般社員のデジタル教育も推進。全社挙げてデジタル変革(DX)に挑み、宅配便量の増加への対応や新サービス開発につなげる。
ヤマト運輸は日本IBM出身の中林紀彦氏を19年に招聘(しょうへい)し、21年4月からはデジタル担当の執行役員として全社のDXを指揮している。
ヤマト運輸の親会社であるヤマトホールディングスは、20年1月にまとめた中長期の経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」で「データに基づいた経営」への転換を掲げ、4年間でデジタル分野に約1000億円を投資する方針を打ち出した。
その一環として、21年にはグループに点在する出荷情報や車両の走行情報、届け先の情報などをデータ基盤「ヤマトデジタルプラットフォーム」に一元化。また、本社やグループ内のデジタル・IT人材、さらに外部から100人以上のデジタル人材を採用し、新たに「デジタル機能本部」として300人規模の組織を立ち上げた。
これらの人材にはジョブ型雇用を導入しており、データサイエンス、データアーキテクトなどの9職種を定義し、必須キャリアや主な専門性、育成方針などを定めた。また新卒のデジタル人材も半年―1年程度でジョブ型雇用に移行することが可能だという。
さらにデジタル人材だけでなく、「使う人たちをどうレベルアップするか」(中林執行役員)も重視。経営層を含む社員全員の意識を底上げするため、デジタル教育プログラム「ヤマトデジタルアカデミー」を実施しており、ビジネスの場でのデータ利活用を進める。
ヤマト運輸は年間約22億個の宅配便を取り扱っているが、配送量の増加に伴い現場の負担も増している上、データの利活用も進んでいなかった。データ基盤とデータ人材、さらにそれを活用できる人材を育てることでDXを進め、効率化や新サービスの開発などに生かしていく。