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デジタル人材を活用したい田辺三菱製薬、社長が語る採用・育成戦略

上野裕明社長インタビュー

田辺三菱製薬は2025年度までの中期経営計画で、患者に満足度の高い最適な治療薬を届ける「プレシジョンメディシン」と、治療薬を起点に予防・未病から重症化予防、予後まで患者の困りごとに応える「アラウンドピルソリューション」の実現を目指す。外部との協業や、人材交流を通じて製薬にとどまらないヘルスケアを充実させる。上野裕明社長に戦略を聞いた。(大阪・中野恵美子)

―新中計の骨子は。

「適切な医療を適切なタイミングで患者に届ける。注力する中枢神経疾患や自己免疫疾患を対象に医薬品開発を進める。その上で予防から診断、予後まで事業領域を広げる。例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)は確定診断まで時間がかかる。早期診断につながるバイオマーカーの探索や患者の動きから評価できる技術が必要だ。国内外でアカデミアやベンチャーなどの知見を組み合わせ、新たな価値を生み出したい」

―どのような人材を獲得・育成しますか。

「デジタル人材の活用が重要だ。デジタルリテラシーの向上に加え、スペシャリストの採用・育成が求められる。滋賀大学と製薬・ライフサイエンス企業向けデータサイエンス教育プログラムを共同で開発してきた。製薬の知見を持ち、デジタル技術にたけた人材の獲得は容易ではないが、親会社の三菱ケミカルホールディングスと人材交流を進めながら育成に力を入れる」

上野裕明社長
―多様な働き方を実践しています。

「リモートワークをはじめデジタル技術を活用した生産性改革を行う。また、ジェンダーや年齢、国籍に関係なく多様な人材が活躍できる制度設計を進める。当社は女性管理職の割合が約12%を占める。働き方に対して女性視点の提案を取り入れるだけでなく、男性の理解を広げることが重要だ。少子高齢化により、労働力不足になればシニア人材が活躍できる環境を整備することも欠かせない」

―どのような人材像を求めますか。

「専門性を磨く『深化』、既存の枠組みにとらわれない『進化』を通じて『真価』を提供する人材だ。高い専門性があってこそ新たな領域に挑戦できる。経営に生かせるデザイン思考を持った人材を参画させることで、成長していきたい」

日刊工業新聞2021年4月15日

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