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大量廃棄時代に備える、太陽光パネル高度リサイクル工場の実力

新菱が来春にも稼働
大量廃棄時代に備える、太陽光パネル高度リサイクル工場の実力

リサイクルの中核となる熱分解炉(イメージ)

新菱(北九州市八幡西区、土山正明社長)は、北九州市内で来春にも太陽光発電パネルの高度リサイクル工場を稼働させる。処理能力はパネル9万枚に当たる年1440トン。アルミニウムやガラス、銀・シリコン、銅に選別。熱利用も含め99%を再利用する。素材別の高度なリサイクルはこれまでにない。太陽光パネルの大量廃棄時代に備え全国展開も視野に入れる。(梶原洵子)

「廃棄物の出ない工場を目指しており、めどがついた」。サーキュラーエコノミー部門の守谷大輔企画リスク管理本部長は技術開発の手応えを語る。新菱は三菱ケミカルグループの子会社。化学の技術を用いて、多様な資源の再利用に取り組んでいる。

太陽光パネルの高度リサイクルの方法は、アルミ枠を外して高温炉に入れ、封止材の樹脂を熱分解し、ガラスやシリコンセル、銅線に分ける。熱分解された樹脂は炉の熱源に使い、熱エネルギーとしてムダなく使う。当初処理の難しかった割れたパネルも、樹脂の分解後に振動ふるいや風力選別を使って選別する技術を早稲田大学と共同開発した。

取り出した金属類は製錬会社に、ガラスはカレット(ガラス屑)メーカーに有価物として販売できる水準まで技術開発が進んだ。同ガラスでグラスウールを製造できることを確認しており、「板ガラスにも展開したい」(守谷本部長)とする。

太陽光パネル1000キロワット分をリサイクルすることで、約200トンの二酸化炭素(CO2)の排出を削減する効果があるという。アルミは約10トン、銀・銅は約1トン回収される。

現在グループ会社で太陽光パネルのアルミ枠を取り外し、残りを破砕して路盤材に使う簡易なリサイクルを行っており、2021年度の回収実績は1万3700枚。「廃パネルは30年頃から増える」(同)といい、新工場では当面、九州地域での実績を着実に積み重ねることが重要となる。

守谷本部長は「25年度以降に関西・関東にも同様の技術を展開したい」と語る。具体的な進出計画は決まっていないが、廃パネルの輸送コストを抑えるため地域内で循環させる必要があるとみる。三菱ケミカルグループの拠点活用のほか、技術ライセンス提供の可能性もある。新技術の普及を目指す。

日刊工業新聞2022年7月8日

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