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ispaceが着陸船打ち上げへ、月面プロ支える欧実験拠点の全容

小型探査車開発・管制室も

【ルクセンブルク=藤元正】ispace(アイスペース、東京都中央区、袴田武史最高経営責任者〈CEO〉)はルクセンブルクの欧州拠点で、月面探査車(ローバー)のナビゲーション技術の開発支援や小型月面探査車(マイクロローバー)の開発に取り組んでいる。月への着陸船(ランダー)打ち上げが年内に迫る中、将来の月面での商用物資輸送やデータ提供、資源探査などの事業化に向けて、欧州拠点の存在もより重要度を増しているようだ。

同社の欧州拠点は2017年に設立した子会社のispaceヨーロッパ。エンジニア主体に25人以上の人員を抱え、ローバーの製造設備や日本本社を補完する欧州サイドの管制室機能も備える。

ここでの探査車のナビゲーション機能の走行実験は、一方向の限られた光源のなか、月面を模した砂一面の環境で実施。タブレット画面でローバーに対する前進や回転といった移動指示を行い、モーションキャプチャーカメラで実際の移動量を追跡。ナビゲーションの正確性の確認などを行う。こうした自前の「ルナヤード」の実験施設は日本側にもあるが、欧州拠点のほうが規模が大きいという。

さらに、搭載ステレオカメラによるローバー周囲の立体マップの作成や、本体前後のアンテナによる地下探査の機能も開発中。後者では、土壌の水分や極地の氷を探り当て、推進燃料の「資源マップ」の作成に役立てる。水や氷を月面から掘り出して使えれば、火星などほかの惑星の探査ミッションで月を燃料供給基地にできる可能性があるためだ。

年内のM1ミッションに向けては、仏アリアングループによるランダーの組み立て・試験ステージがこのほど完了。米フロリダ州からスペースXの「ファルコン9」ロケットでランダーを打ち上げ、月面に軟着陸させる。続く24年のM2ミッションでは、欧州拠点で手がけたマイクロローバーを搭載したランダーを打ち上げ、ローバーでの月面走行とデータ収集を実行に移す計画だ。

日刊工業新聞2022年7月1日

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