世界の月探査に乗り遅れるな!ニッポン人宇宙飛行士はいつ着陸する?

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人類で初めて月に着陸した米国の宇宙飛行士(NASA提供)

文部科学省は2021年秋をめどに日本人宇宙飛行士を新規募集する。日本人宇宙飛行士の募集は油井亀美也さんら3人の宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士を募集した08年以来13年ぶり6回目となる。24年にも宇宙飛行士の月面着陸を目指す米国提案の「アルテミス計画」に向け、日本人宇宙飛行士として初となる月面着陸や国際宇宙探査への貢献が期待される。

国際的な月探査計画で各国が宇宙飛行士の募集・育成に力を入れている。数年後の本格的な月探査を見据え、政府は日本人宇宙飛行士を一定規模維持する必要があると判断し、新規宇宙飛行士の募集を決めた。

今回の募集ではJAXAが民間と連携し、宇宙飛行士の募集や選抜、訓練に企業のノウハウやアイデアを活用する。具体的には教育や人材に関する企業、自動車や航空などの分野で専門性の高い技術者を教育した経験を持つ企業からのアイデアを募る。21年春ごろに企業に向け募集・選抜、訓練に関する提案募集を開始。21年夏ごろに連携企業を選定し、21年秋ごろに宇宙飛行士の募集を始める。

23日開かれた記者会見で、宇宙飛行士の若田光一JAXA特別参与は「民間の優れた力で有人宇宙活動の持続的な発展につなげられるのではないか」と期待を述べた。

日刊工業新聞2020年10月26日

「アポロ11号」着陸から50年

「あいつら月に行きやがった」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の的川泰宣名誉教授は50年前をこう振り返る。1969年7月21日(日本時間)、米国のアポロ計画で人類が月に着陸し、そして今再び世界中が月探査に向け動き始めた。米国は2024年にも宇宙飛行士を月面に着陸させる「アルテミス計画」を発表。その動きを各国は敏感に察知し国際探査に向けた準備を進める。日本人宇宙飛行士が月に着陸する瞬間を我々は見られるのだろうか。

「米ソ開発競争」経て…


70年代に米国はアポロ計画で宇宙飛行士を定期的に月に送り、「月の石」と呼ばれる月の試料を採取した。月の石の分析で多くの科学的知見が得られたという。的川JAXA名誉教授は「分析によって、地球に巨大な天体がぶつかり分裂して月になったという説が新たに持ち上がった」と当時の月探査の科学的意義を強調する。

20世紀に入るとロケット技術の急速な進歩で、米国と旧ソ連との間で宇宙開発競争が激化。その一環で米国のアポロ計画は進み、人類は69年7月に月に降り立った。JAXA国際宇宙探査センターの佐々木宏センター長は「アポロ計画は旧ソ連との競争の中で生まれ、月に行って帰って来ることが主なミッション。科学的にも月全体ではなく、局所的にしか探査できていなかった」と話す。

それから半世紀。各国による月面探査が再び活発化している。米国は24年に運用が終了する国際宇宙ステーション(ISS)に続き、月を周回する月近傍有人拠点「ゲートウェー」の整備を進めている。

将来の火星有人探査に向けた中継地点と位置付けられている。当初、米航空宇宙局(NASA)は22年から同拠点の建設を始め、26年頃の完成を目指すとしていた。アルテミス計画ではゲートウェーから月面に宇宙飛行士を着陸させることを想定し、ゲートウェーの完成も24年より前倒しになるのではないかと見られている。

月面着陸への中継基地となる月近傍有人拠点(JAXA提供)

こうした動きに対し、日本は深宇宙補給技術や有人宇宙滞在技術などの基盤技術をアピールする。政府は19年中に正式参加の可否を表明するもようだ。日本は無人での月探査計画も進める。JAXAは21年度に月面の目標地点に誤差100メートル以内のピンポイント着陸を目指す月着陸実証機「SLIM(スリム)」を打ち上げる予定だ。

月面へのピンポイント着陸を目指す「スリム」(JAXA提供)

さらにJAXAとインド宇宙研究機関は17年、水がある可能性を秘めた月極域での探査に関する協定を締結。日本から23年度にも資源の可能性を検討する月探査機を打ち上げる。欧州宇宙機関(ESA)とカナダ宇宙庁(CSA)と共同で、月面を移動し大量の試料を地球に持ち帰る計画「HERACLES(ヘラクレス)」の探査機の26年度の打ち上げも検討する。

一方、月への着陸を目指す超小型月探査技術実証機「OMOTENASHI(おもてなし)」、東京大学とJAXAの研究グループが地球から見て月の裏側への航行を目指す超小型深宇宙探査機「エクレウス」などの計画も進む。これらの探査機は、NASAの新型大型ロケット「SLS」の初号機に搭載し打ち上げる計画だ。

中国は1月に月探査機「嫦娥(じょうが)4号」を初めて月の裏側に着陸させることに成功した。月探査に向けた国際競争はますます激化していく。

民間も開発後押し

すでに民間は月探査に積極的に取り組んでいる。宇宙ベンチャーのispace(アイスペース、東京都港区)は、21年にも無人の月着陸船を月に着陸させ、探査車(ローバー)で月面を探査する計画だ。 同社と米3機関は共同でNASAの月面輸送サービスのプログラムに採択されている。同社の袴田武史最高経営責任者は「月面の資源探査に必要な輸送システムを構築したい」としている。

トヨタ自動車も月に進出する。トヨタは燃料電池車(FCV)の技術を利用したローバーをJAXAと共同開発する。こうした民間の動きは宇宙ビジネス業界を活性化し、宇宙開発全体を大きく押し上げると期待される

日刊工業新聞2019年7月17日

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