医工連携で実績を上げる、ワイズ・リーディングのAIシステムの仕組み
ワイズ・リーディング(熊本市北区、中山善晴社長)は、遠隔画像診断や人工知能(AI)ソリューションを提供する。言語、画像、動体の各領域でAI開発を手がける。言語領域のAIは、画像を見て診断する読影で放射線診断医の記録業務の負担を大幅に軽減するシステム。一方、画像領域のAIシステムは、産業界のニーズに応えて医工連携で実績を上げる。
放射線診断専門医の中山社長は「最初に医療系ニーズがあった」と振り返る。医療現場は医師不足が課題。同専門医は、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴断層撮影装置(MRI)の画像をオンラインでやりとりし、読影する。中山社長は「実はリポート作成が身体的にも大変な業務負荷になっている」と打ち明ける。
1日に数百枚以上の画像を診断し、考えられる病名や診断結果を報告書に仕上げる。1件の診断に関連する一連の作業を、1日50―100件以上こなす。疲労など身体的負担は診断に影響を及ぼしかねない。
これまで課題解決のために、文字起こしの専門家や自動音声入力システムに頼ったこともあったが、満足いく解決には至らなかった。そこでエンジニアを採用して社内に開発ラボを設置。技術開発による自社解決を目指した。2016年にAIリポート作成支援システム「ワイズ・チェイン」を開発して18年に商品化。日米で特許を取得した。
同システムは自然言語処理AIを搭載し、形態素解析という機能で名詞や動詞など品詞を分類。言葉と言葉の離れ具合を計測して文章を作成する。
また、読影のために取り込んだ数万件のデータを基にAIが判断する。関連するキーワード、例えば「肺」や「がん」などから絞り込み、関連する文章を検索してリストを構築しパソコン画面に表示。医師が選択してリポートに仕上げる。まれな症例でも手がかりとなるキーワードがあれば表示可能だ。
中山社長は同システムで「疲労、忘却、継承という、生物として人が持つ制約をクリアできる」と強調する。22年4月時点で全国約30の医療施設が導入。業務時間が約3割短縮できたという医師の報告もある。
画像領域のAI診断システムは、九州オルガン針(熊本県玉東町)やアイシン九州(熊本市南区)が製造部品の検品システムとして導入した。「製造業の検品業務はAIと親和性が高い。今後の広がりに期待」(中山社長)と話す。(西部・勝谷聡)