小惑星「リュウグウ」試料の分析で推測された生命誕生の起源
岡山大学の中村栄三特任教授らは、小惑星「リュウグウ」で採取した試料に生命の起源に結びつく23種類のアミノ酸や、窒素を含む環状の有機物などが含まれていることを明らかにした。試料は主に含水層状ケイ酸塩鉱物で構成され、総体積に対して空間を含む量を表す「空隙(げき)率」は約50%であることが分かった。リュウグウの母天体が氷天体であり、アミノ酸を含む有機物が形成進化して地球環境にもたらされて生命が誕生したと推測される。
成果は10日、日本学士院紀要に掲載された。
リュウグウで採取した試料16粒に対し、70個の元素の濃度を決定した。含水鉱物として存在する水素が0・69―1・30%(質量比)、炭素が2・79―5・39%(同)含有することが分かった。また23種類のアミノ酸や窒素を含む環状の有機物が検出された。含水層状ケイ酸塩鉱物と空隙の部分と、無機鉱物や有機物で構成される炭素質の隕石に分類。同隕石からは太陽系内で物質が融解などを経験した時にできる高温形成物が観察されるが、リュウグウの試料には見られなかった。リュウグウは太陽系から遠方の低温領域で集積し、現在まで初生的な性質を保持していることが分かった。
リュウグウの試料に含まれる含水鉱物は太陽系誕生から約260万年後に母天体で形成し、温度は0―30度Cと推測された。リュウグウの母天体は、太陽系が形成した直後に有機物やケイ酸塩を含む氷に富む氷天体だったとみられる。
日刊工業新聞2022年6月10日