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小惑星「リュウグウ」で採取した試料の分析でわかったこと

太陽系誕生解明に期待

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」で採取した試料が太陽系全体と等しい化学組成比を持つ「イヴナ型炭素質隕石」に分類されることを解明した。試料中に7%程度の水と約5%の炭素を含み、主な構成鉱物はリュウグウの母天体で太陽系が誕生して500万年後に沈積したと推測された。リュウグウの形成過程や太陽系誕生の謎の解明に近づくと期待される。

成果は10日、米科学誌サイエンスに掲載された。

リュウグウから採取した試料の化学・同位体組成と構成物質の成因や年代、隕石との関係性を調べた。66個の元素の存在量などからイヴナ型炭素質隕石と同じような組成であることが分かった。同隕石の化学組成は水素や希ガスなどの一部の成分を除いて太陽系全体と等しいと考えられている。そのため、リュウグウは形成時から化学組成を保っている原始的な天体であることが明らかになった。

主成分は含水の粘土鉱物であり、その他に炭酸塩鉱物や硫化鉄、酸化鉄で構成されることが分かった。この鉱物は、太陽系が誕生してから約500万年後にリュウグウの母天体で起こった化学反応の生成物であることを見いだした。当時の母天体の温度は約40度Cで、現在のリュウグウの温度は100度C以上にはなっていない。そのため同鉱物が生成された後に母天体の破壊が起こりリュウグウが形成され、主成分の粘度鉱物から水の一部が蒸発して現在の環境ができたと推測される。

日刊工業新聞2022年6月10日

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