トヨタ・日産が乗り出す、脱炭素技術をレースで磨く狙い
自動車メーカーが、耐久レース現場を活用したカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)技術の開発に相次ぎ乗り出している。トヨタ自動車はレースで培った知見を基に、水素を燃料とする水素エンジン車の市販化に向けた開発を始めた。日産自動車は、カーボンニュートラル燃料(CNF)を使った車両で初参戦した。開発サイクルが早く極限性能を試せるレース環境を活用し、技術の進化を加速させる。(名古屋・政年佐貴恵)
トヨタ、水素エンジン市販化狙う
「仲間が増えるのは心強い」。4日に静岡県小山町の富士スピードウェイで開幕したスーパー耐久24時間レース。ドライバー「モリゾウ」として出場した豊田章男トヨタ社長は、ピットを訪れた日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)を前に笑顔を見せた。これに対しグプタCOOは「協調しながら競争もできるのは日本の特徴だ」と応えた。
1年前から水素エンジン車で参戦しているトヨタは、市販化を念頭に置いたスポーツ多目的車(SUV)「カローラクロス」の水素エンジン試作車を公開した。2本の水素タンクを床下に搭載し座席や荷室を確保した。液化水素を使う水素エンジンシステムの開発も開始。水素の搭載量を増やせ航続距離を2倍に延ばせるという。
仲間作りでは新たに神戸製鋼所が加わった。同社が開発した製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を大幅削減できる素材を初めて実用化し車両部品に採用。豊田社長は「さまざまな手段で(脱炭素化を)やろうと多くの仲間が参加してくれている」と手応えを示す。
日産、脱炭素燃料で参戦
日産は新型スポーツ車「Z(日本名フェアレディZ)」をベースとした車両で、初めて耐久レースに挑んだ。使ったのは、木材チップや廃食用油など廃棄する非食用のバイオ原材料を用いて製造した合成燃料だ。グプタCOOは「モータースポーツファンと脱炭素化のために取り組む」と参戦の狙いを説明。「いろいろな技術を持たねばならない。経験を積む」と続けた。