日産「ノート」の治具装着工程に採用された中小企業の特許技術
堀硝子(神奈川県厚木市、高本勝己社長、046・285・3731)が開発した「過熱水蒸気工法」が、日産自動車の小型車「ノート」のドアガラスへの樹脂治具装着工程に採用された。同工法の採用は2例目。接着剤の乾燥時間を従来の1日から約1分に短縮でき、工程間物流や乾燥スペースの大幅削減が期待できる。堀硝子は「ガラスや樹脂なら乾燥時間の短縮が可能。幅広い分野に提案したい」(原田裕之主査)と意気込む。
過熱水蒸気工法は、水蒸気をヒーターで加熱して約200度Cの過熱水蒸気にし、それを特殊な吹き出し口(ヘッド)から、接着剤で接着した対象物に吹きかけて乾燥を早める。接着剤の選定や条件検討の工夫により実現した。開発を担当した技術本部の原田主査によると「特殊な接着剤ではなく、汎用の接着剤を水蒸気で硬化促進させる点で苦労した」という。堀硝子の特許技術で2018年に日産のミニバン「セレナ」のフロントガラスへのカメラ装着工程で初めて採用された。
従来のドアガラスへの治具装着工程では、ガラスをドアから外れないようにするガラスホルダーと呼ぶ樹脂治具を人が接着して組み付ける。50枚分を特殊なパレットに並べ、乾燥室に運んでドアへの組み付けまで在庫として保管していた。過熱水蒸気工法の採用で、乾燥エリア約150平方メートルが不要になり、輸送費が半減する。自動車組み立て工程の中で行うことができ、作業の自動化も可能としている。
堀硝子は「自動車以外の分野としてガラスメーカーへの提案を積極化しつつ、より短時間で乾燥する技術を確立したい」(原田主査)としている。過熱水蒸気工法を2月に開催するオンライン展示会「テクニカルショウヨコハマ2021(第42回工業技術見本市)」に出展する。
日刊工業新聞2021年1月18日