空気電池を安全かつ長寿命化する、東レが開発した「イオン伝導ポリマー膜」のスゴい性能
東レは、開発が進む空気電池の安全性向上と長寿命化が可能なイオン伝導ポリマー膜を開発したと発表した。重量エネルギー密度がリチウムイオン電池の10倍以上というリチウム空気電池は通常の微多孔フィルムのセパレータでは、異なる電解液の混合による劣化やショートの発生などの安全性が課題。新たなポリマー膜は無孔構造で分離性能が高く、金属イオンがサイト間をジャンプする「ホッピング」により伝導性を確保した。
開発したイオン伝導ポリマー膜は高耐熱アラミドポリマーにイオン親和性を加えた設計。さらにリチウム塩を複合化し、無孔構造でイオン伝導性を高めたのが特徴。空気電池内の異なる電解液を分離するとともに、金属イオンだけをホッピングにより移動させることができる。
正極に空気極を、負極に金属リチウムを使うリチウム空気電池の場合、微多孔フィルムのセパレータでは電解液が含浸し混合により劣化しやすい。また充電時にリチウムの結晶成長が起きてショートすることもある。新ポリマー膜により課題を解決できる。微多孔フィムルに比べて10倍以上の電池作動を確認したという。
リチウム空気電池は革新型電池として電気自動車(EV)や産業用ドローンなどの航続距離を大幅に伸ばす技術として期待されている。
日刊工業新聞 2022年6月2日