東北でラリー大会を開催したトヨタ、章男社長が深めた感慨

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トヨタ自動車が宮城県利府町で開いたラリー大会では豊田章男社長もハンドルを握った

トヨタ自動車が、生産子会社であるトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)の設立10周年の節目に、同県で初のラリー大会を開催した。同社は東日本大震災の復興支援の一環で、トヨタ第3の生産拠点として立ち上がった。これまでに生み出した雇用をはじめとする経済効果に加え「ラリーによる町おこし」でさらなる貢献を図る。モータースポーツを宮城県が掲げる「創造的な復興」の一助とし、新たな可能性を示そうとしている。(名古屋・政年佐貴恵)

豊田社長が乗車するGRヤリス

「震災から11年でラリー大会を開催するまでに復興できた。新しい地域を作るところを選手に見てほしい」―。15日に開かれた大会の会場となった宮城県利府町の熊谷大町長は、大会を“復興イベント”ととらえ、モータースポーツによる地域振興に期待を寄せた。

今大会はトヨタが主催する初心者向けラリー大会「トヨタガズーレーシング ラリーチャレンジ」の第3戦として実施された。ラリー愛好家ら42台が参戦し、計約80キロメートルを疾走。観戦ステージには約2000人が集まり歓声を上げ、沿道でも地元住民らが旗を振って応援するなど盛り上がりをみせた。ドライバー「モリゾウ」として参戦したトヨタの豊田章男社長は「震災時にトヨタ東日本を作り、長期的に一緒に戦おうと決めた。その地でのラリー大会は大変うれしく、ありがたい」と感慨を深める。

トヨタは東日本大震災を受け「一過性の寄付、援助ではなく、雇用とビジネスを回転させて利潤を生み、税金を払い続けて社会貢献につなげる」(豊田社長)として、2012年にトヨタ東日本を設立した。周辺の県を含め多くの部品メーカーが集積し、東北に自動車の一大サプライチェーン(供給網)を構築。当初500億円だった宮城県の自動車出荷額は、今や10倍の5000億円に増えた。トヨタ東日本は大会に合わせて工場見学会を行うなど、大会の盛り上げに協力した。宮内一公社長は「ラリーで当社に勤めたい人が増えれば嬉しい」と笑う。

ラリーは山道や林道などコースの条件が変わる中での車の性能やドライバーの技量を競うほかに、公道を使う点が特徴だ。自治体や地元住民の理解が欠かせない。このためトヨタは、ラリーを過酷な環境で得られた知見を車開発に生かす「いい車づくり」の手段のみならず、地域活性化策にも位置付ける。ラリーの開催で地方に経済効果をもたらすと同時に、モータースポーツが社会に受け入れられ定着する土壌とする。

トヨタにとって東北でのラリー開催は長年の夢でもあった。モータースポーツ事業を統括する佐藤恒治執行役員は「東北での開催地をずっと探していた」と明かし、「21年にラリーの地区大会を開催した実績のほかに、一緒に盛り上がれる雰囲気があった」と、開催地決定の理由を説明する。来年以降も利府町での開催を続けたい考え。トヨタの東北復興支援は、新たなステージに入る。

日刊工業新聞2022年5月23日

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トヨタ 復興 東北

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