力を加えると色が変わる「メラミンスポンジ」がスゴい!慶応大が技術開発
熟練医師・職人の匠の技 “見える化”
慶応義塾大学の大野菜穂子大学院生と緒明佑哉准教授らは、メラミンスポンジを高感度圧力分布センサーとして利用する技術を開発した。力を加えると色が変わる。指でやさしく触れる程度の3・5キロパスカルから、体重をかける680キロパスカルまでの圧力分布を記録できる。衝撃や外力がないことを保証するトレーサビリティーツールや、熟練医師の手技や職人の匠の技の可視化につながる。
メラミンスポンジに層状ポリジアセチレン(PDA)をコーティングし、乾燥微粒子で閉じ込めたポリエチレンイミンの微小液滴を乗せる。スポンジがつぶれると微小液滴が崩壊してポリエチレンイミンが放出されてスポンジ中を拡散する。PDAは青色だが、ポリエチレンイミンを層間に取り込むと分子がねじれて赤くなる。
スポンジの圧縮応力に応じて変色の広がり具合が変わるため、色の変化から外力を推定できる。力センサーとしての計測範囲は3・5キロ―680キロパスカル。スポンジサイズの圧力分布を求められる。市販の素材や試薬で圧力分布センサー構成でき、安価に実用化できると見込まれる。
医師の手技など、繊細な作業を記録する応用研究を進める。既存の歪みセンサーアレイよりも空間分解能が高く、使い捨てる計測が可能。繊細な作業は感覚で表現されることが多く、数値化できると技能承継につながる。また精密機器などの搬送時に衝撃がかからなかったことを保証するトレーサビリティー用途では安価なツールになると期待される。詳細は高分子学会が25日からオンラインで開く「第71回高分子学会年次大会」で発表する。
日刊工業新聞2022年5月23日