融合研究で社会課題解決、産総研は産業競争力に貢献する

連載・変わる産総研#04

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東京農工大学は産学連携で動物医療設備を開設する(イメージ)

産業技術総合研究所は社会課題の解決と産業競争力の強化が研究の根底にある。2020年からは脱炭素、この前は人工知能(AI)や半導体への研究投資を受けてきた。研究プロセスと研究成果の両面から競争力に貢献していく必要がある。

「産総研は社会課題解決に向けて融合研究を進める場だと自信を持って言えるようになった」と村山宣光副理事長は採用面接の一場面を振り返る。所内で異分野の融合研究の旗を振ってきた。これが対外的にも浸透し、若い研究者が自分のキャリア構築のために融合研究の場として産総研を選ぶようになった。産総研は七つの研究領域をもつ。この多様性を生かすのが融合研究になる。

村山副理事長は「産総研の強みは一点突破の卓越技術と技術の網羅性の両方を備えていることだ」と説明する。特に水素関連技術は息の長い研究を続けてきた。水素は作る・運ぶ・使うの三つの主要技術をほぼすべて手がけている。人工光合成やメタンからの水素製造、エネルギーキャリアなどをそろえる。アンモニアを燃焼させるガスタービン発電は世界初だった。これがエネルギーや化学業界などでのアンモニアの燃料利用開発につながっている。

半導体分野では台湾積体電路製造(TSMC)との共同研究が進む。3次元実装をコア技術にロジック半導体を開発。国の自動運転の開発プロジェクトでは特定条件下で運転を完全自動化する「レベル4」を実現する。いずれも産総研のコア技術が国の科学技術政策を支えている。

一方、多様性が増すとマネジメントは難しくなる。領域ごとに研究の評価尺度も変わるほどだ。その上で社会課題解決に導くためにシンクタンク機能を強化している。社会課題を技術課題に整理し、バックキャスト型で必要な技術を抽出する。ここに研究者が多様なシーズを提案する。

検討チームは所内から専門家を集めて立ち上げる。村山副理事長は「課題整理機能を組織的に担保する。一線の研究者が調査分析するため深い洞察が得られる」と説明する。経済産業省や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のシンクタンク機能と連携し技術インテリジェンスを高めていく考えだ。研究も政策支援も異分野をつないで社会課題に答えを出していく。

日刊工業新聞 2022年3月31日

COMMENT

小寺貴之
編集局科学技術部
記者

政府の戦略投資分野や社会課題への研究開発投資が増えて、大学では研究の自由度が下がっているという声があります。ただ社会課題を解くには多様な科学と技術が必要で、ミッションこそ決まっているものの手段は多様です。戦略投資の範囲も広大です。器用な先生は自らの技術シーズをいろんな社会課題に適用して予算を確保し、ラボの中では自由度を確保している方もいました。これをラボ単位でなく研究センター単位で実践してきたのが、産総研のセンター長クラスや領域長の先生たちです。シンクタンク機能としてシステム化できるとミッションと自由度の両立は新しいステップに移れるのではないかと思います。

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