女性が“隠れ我慢”せずに活躍する社会に、製薬メーカーが婦人科受診促進

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日本は他国に比べ、婦人科を受診する割合が少ない。働く女性が急増する中、婦人科疾患の啓発や受診率の向上に向けて製薬各社が対応を急ぐ。武田薬品工業は希少疾患である遺伝性の血液疾患「フォン・ヴィレブランド病」の理解促進から、早期発見と診察を支援。バイエル薬品(大阪市北区)は増加傾向にある子宮内膜症などの疾患を相談できるサービスを行う。ツムラは4月、全社員が費用負担なしで婦人科を受診できる社内制度を整えた。(藤木信穂)

大塚製薬による「働く女性の健康意識調査」の結果

武田薬品はエムティーアイが運営する女性向け健康情報サービス「ルナルナ」などを活用し、フォン・ヴィレブランド病の疾患啓発に乗り出した。アプリ内のチェックリストから月経異常や止血異常について回答すると同疾患の可能性が表示され、該当すれば医療機関の受診を促す仕組み。患者の同意の下、医師へ情報をつなぐ橋渡しの役目も担う。

同疾患は血液中にあるフォン・ヴィレブランド因子と呼ぶたんぱく質が欠乏したり、働きに異常があったりして出血が止まりにくくなる病気。女性の場合は過多月経から発覚する場合もあるが、認知度が低く受診に至りにくい背景がある。

バイエル薬品はUbie(東京都中央区)が提供する医療情報サービス「ユビーAI受診相談」と自社の情報サイト「生理のミカタ」をつなぎ、ライフスタイルの変化により罹患(りかん)率が増える子宮内膜症などの婦人科疾患の情報を発信している。同疾患は痛みや不妊の原因となり、卵巣に発生するとがん化のリスクが高まる。

婦人科検診を全社員が気軽に受診できるようにしたツムラ。同社が社員に行った健康アンケートで、最も生産性に影響していると感じる症状は「生理痛・生理不順」(68・6%)だった。続く「憂うつ」や「目の疲れ」、「疲れ・だるさ」などの症状は、性別にかかわらず半数以上の社員が回答した。

こうした結果を踏まえ「全社員が“隠れ我慢”せず、不調を感じたときに休むなどの選択肢を取れるように」との配慮でサポート体制を整備したという。併せて、申請をためらうとの声をもとに生理休暇の社内名称を「Femaleケア」に変更したほか、診断書がなくても体調不良による通院休暇を取れる制度なども導入した。

ロシュ・ダイアグノスティックス(東京都港区)によると、日本は婦人科の受診経験者の割合が55%と、英国、フランス、スウェーデン、豪州の5カ国中で4位だった。初めて婦人科を受診する年齢は20代と遅く、具体的な必要性があれば受診するが、受動的な傾向があり「費用がかかる」「面倒」などの理由で他国より受診を避けていることが分かった。各国の16―39歳女性に婦人科の受診に関する意識や実態を調査した。

このほか、大塚製薬が行った働く女性に対する健康意識調査からは「女性ホルモン(エストロゲン)の変化によって起こる月経前症候群(PMS)や更年期の諸症状などの健康問題が、女性活躍を妨げる要因の一つになっている」ことが浮かび上がった。同社は「個人の対処だけに任せず、企業課題として取り組む必要がある」と指摘している。

日本ではウェブサイトなどで婦人科疾患の情報を集める傾向にあり、医師や家族などと症状について話す機会が少ない。女性特有の疾患は妊娠を望んだタイミングで気付いたり、症状が現れるころには重篤化していたりするケースも多い。不調を見逃さないためにも定期的な婦人科の受診や検診が必要だ。

日刊工業新聞 2022年5月12日

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