物材機構が予算の“前借り”制を導入、研究の「あと一歩…!」後押し
機動・競争力高める
物質・材料研究機構は、機動的な予算投入を制度化する。国の研究開発事業などで技術を開発すると、当初の計画にはない用途への応用が開けたり、知財化するために追加の実験が必要になる場面がある。こうしたあと一歩を後押しする予算の〝前借り〟制を導入する。2022年度は理事長の裁量経費で運用するが、組織の機動力を維持する予算として制度化したい考え。実現すれば他の国立研究開発法人や大学にも広がる可能性がある。
特許を申請するための実験や新用途の概念実証(PoC)など、追加で発生する有望な応用への研究開発を予算面から後押しする。こうした実験の経費は大きくても数百万円。多くは数十万円程度と少額。だが研究計画にないなどの仕組み上の問題で諦めたり、研究者の中で優先順位が上がらずに、先送りされてしまうことが少なくなかった。
そこで物材機構として予算を用意する。これを元に得られた成果で企業との共同研究や国の研究事業に採択されたら間接経費などとして回収する。研究者にとっては実験を諦めたり、先送りする理由がなくなり、有望だと判断される技術には挑戦できる環境が整う。
研究開発において新奇の発見や飛び抜けた技術は、本命の用途以外にも枝葉のように新しい芽が見つかる。特に周囲の研究者が新しい応用に気が付いて開拓することが多い。こうした研究の幅を広げる資金的な余裕は研究室単位で蓄えられ、これが研究室ごとの競争力でもあった。物材機構として予算を用意し、組織としての機動力と競争力を高める。
日刊工業新聞 2022年4月25日